2021年9月18日土曜日

バングラデシュー日本国際交流プロジェクト(2021年8月開催)報告書(6)  木村奏(上智大学理工学部3年)Reflection on the BJEP 2021 (Bangladesh-Japan Exchange Project)(5) Soh Kimura (3st-year, Sophia University)  

 「BJEPに参加して」

上智大学理工学部 機能創造理工学科 3年 木村奏


私がAAEEが主催するプログラムに参加するのは今回が2回目である。1回目に参加したプログラムは去年の夏に開催されたVJEP、日本とベトナムの間での交流プログラムであった。コロナウイルスの拡大によりオンラインで開催された余儀なくされたVJEPは、ネット上での国際交流をしたことがなかった私にとって、未知の体験の連続だった。日本人同士でさえうまく意思疎通ができないオンライン上での会話を、違う母語を持つ人同士で行うのはやはり難しく毎日毎日が試行錯誤の連続であった。BJEPはその経験を踏まえた上での参加だったため、そこまで苦労せずにやりきることができるだろうと高をくくっていたが、実際はVJEPよりも遙かに難しいプログラムであったように今振り返りながら思う。前回と大きく違うのは、「Deep Culture」という比較的抽象的なアカデミックな要素の強いテーマであったこと、そして企画の段階からこのプログラム作りに関わらせてもらったということ。ここで改めてプログラムを企画の段階から振り返りながら、学んだことをまとめたい。

 

私がこのプログラムを通して学んだことは大きく分けると2つに分かれる。1つ目は「宗教」に対する認識が日本とバングラデシュとでは大きく異なる、ということである。これは参加する前から少しは予想していたが、その認識の差は想像するより大きかった。2つ目は、バングラデシュ人と日本人では確かに属している集団が違うものの、それは日本人同士でも同じであり、個人レベルでみると、バングラデシュ人も日本人も大して変わらない、ということである。

 

まずは、「宗教」に対する認識の違いに関して。これを強く感じたのは、BJEPの企画を行っているときである。途中で変更になったが、もともとこのプログラムのテーマは「宗教」であった。宗教は個人の価値観を強く規定している概念であり、宗教について話し合うことは必然的に自己開示を促すからである。オンラインプログラムにおいては、仲を深められるかどうかは自己開示できるかどうかに強く依存している。従って、自己開示を促す「宗教」というテーマはオンラインプログラムの障害を打ち破るものとして、期待された。私自身も面白いテーマだと期待していた。そこに待ったをかけたのがバングラデシュ側のアシスタントである。「宗教」をテーマにするには解決すべき問題が多すぎるというのである。多くの日本人にとって、宗教は身近にこそあるものの、信仰すべき対象ではない一方、バングラデシュの人にとって、宗教とは、社会の根本に根ざしたものであり、議論の対象に取り上げて良い対象ではないという。何より興味深かったのが、「聖書を誤って解釈をすることは冒涜に当たるため、宗教をディスカッションのテーマとしても、自分自身の意見を言い出しにくいのではないか」というもの。聖書のような絶対的存在を持ったことがない私にとって、その意見はとても新鮮であった。このように、バングラデシュと日本の間では「宗教」に対する意識が大きく違うことから、「宗教」がテーマになることはなかったが、その違いを経験できたことは私にとってとても有意義な学びとなった。

 

このようなことをプログラムを作成していた時点で経験していたため、バングラデシュの参加者の価値観や視点を理解するのはとても難しいだろうとの思いを抱いた状態でのプログラムに参加を迎えることとなった。プログラムの前には、相手国のSurface Culture(Deep Cultureに対する概念。いわゆる文化はこちらを指す)を学ぶためのプリプログラムが行われた。そこでも日本とバングラデシュとの文化的な差を感じさせられただけのこともあり、バングラデシュの参加者の価値観を理解するのは難しいだろうという思いはかなり強いものになっていた。しかし、実際にプログラムに参加し感じたのは、むしろ逆のことであった。確かに、バングラデシュ参加者と私の間には価値観の違い、考え方の違いが存在し、それは時には私を混乱させもしたが、それは日本人の参加者と私の間でも同様であった。同じ日本人であっても、やはり受け入れられないことは受け入れられないし、考えが衝突するときは衝突する。そこにバングラデシュや日本といったことは全くなかったのである。

 

人間は社会的動物である、とかの有名なアリストテレスはいった。決して一人では生きられないのが、人間の性。生きていくために必ずどこかの集団に属さなければいけない。属する集団は決して一つではない。家族、友達、同級生、会社、学校、国家・・・より抽象的には、文化圏、言語圏、国語圏・・・様々な集団に同時に属し私たちは生きている。生まれの国が違ったとしても、同じ趣味を持つ人同士は、同じ趣味を持つ人の集団という共有の集団に属する事になる。国家という概念はその数多くある集団の一つに過ぎないのだ。だからこそ、国が違っても、共通の集団は多くあり、それを介して理解し合うことはできるし、逆に国が同じだからといってすべての集団が共通しているわけではないから必ずしも理解し合えるとは限らない。これが私がBJEPを通して学んだ2つ目の事である。

 

このように、BJEPは2回目のオンライン国際プログラムであったが、予想が覆されることが多々あり、また、VJEPとは全く異なる学びがあり、大変楽しむことができた。何より、このプログラムを通して、かけがえのない仲間と知り合うことができたのは、私にとって何よりの財産になった。今回、得た学び、仲間を今後も大切にしながら、生活していきたい。






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