2019年4月13日土曜日

AAEEネパールMero Sathi Project 2019 2月プログラム 報告書(3)佐久間彩果(上智大学総合グローバル学部3年)

「心の感度を研ぎ澄ませ」

上智大学 総合グローバル学部
総合グローバル学科3年
佐久間彩果

 

 メロサティプロジェクトFeb 2019、このプログラムは私に強烈なエネルギーを与えてくれた。寂れきった自動車にやっとエンジンがかかり始めたような、そのガソリンが今回の経験である。はじめに参加前の私について説明したい。
 今回のプログラムに参加する前の私は、将来が不安だが一体今何を頑張るべきで自分は何をしたいのか分からず、結局何も行動を起こせないままでいる蹌踉めいた大学生だった。頻繁に自分と誰かを比べ、その度に襲われる劣等感と焦燥感に悩まされていた。(参加前の私は幸せではないだろう。)自分の足で立てていない自分を変えたくて、ずっと行ってみたかったネパールに行くことを決めた。ネパールに行ったら何か変わると信じていた。根拠は特にない。重たい腰を持ち上げ勇気を出して参加を決めたは良いものの、事前ミーティングを終え出発が近づいてくるにつれ内心どこか憂鬱な自分がいた。他の日本人メンバーと比べ私は圧倒的に力不足であると感じ不安が勝ってしまったからだ。そもそも大学生になってから私は心の開き方を忘れていた。その上語学力も十分でないのに、これから2週間寝食を共にする参加メンバーと果たして仲良くなれるのだろうか。尽きることのない不安をいっぱいに抱えた出発前の私は完全に「戦闘モード」で、友人から「ネパール楽しんでね」と言われるたびに違和感さえ覚えていた。
 そんな戦闘モードの状態でプログラムを迎えた私は、いよいよカトマンズの空港に降り立った。空港のこじんまりさに驚きつつ、出国手続きを終え外へ出るとネパール人メンバーが満面の笑顔で温かく出迎えてくれた。ホテルまでの道中では、目に飛び込んでくる景色、鳴り止むことのないクラクションの音、舗装されていない道を走っている感覚など、全てが新鮮で胸が高まった。このようにして、私にとって掛け替えのない愛おしい2週間の日々が始まったのであった。
 さて、今回のメロサティプロジェクトのテーマは「幸せ」であったが、漠然としたその言葉の意味について私はうまく消化できていないままこのプロブラムを迎えていた。プロブラムには学校や老人ホームへの訪問、村でのホームステイなど様々なアクティビティが組み込まれており、アクティビティを通して多様なコミュニティを対象に幸せに関するフィールドワークの実践が行われた。どのアクティビティからも幸せについて考えさせられた出来事に遭遇したが、ここではアクティビティの中で最も印象に残っている村でのホームステイとそこで実施した村人インタビューについて書こうと思う。
 ネパールの首都であるカトマンズから8時間ほど車を走らせた場所に、私たちが4日間滞在したガルガンという村がある。ヒマラヤ山脈の麓にあるガルガン村の標高は2070m、グルン族が多く居住する地で、ホームステイをビジネスとして行っている。カトマンズとは景色も気候も全く違っていた。村には動物があちこちで見られ、丘を少し登ればそこには美しいヒマラヤ山脈の大パノラマの絶景が広がっており、いつも見上げていた雲は見下ろせてしまう。ひんやりした綺麗な空気を肺いっぱいに溜め込むと体の中まで浄化されたような気分になってくる。そんな美しい景色の村で、私たちは2つの家庭に分かれてホームステイを体験した。村人は主にグルン語とネパール語を話すため、意思疎通を図るにはネパール人メンバーの通訳を必要としたが、ホームステイ先の方たちの人柄の良さやホスピタリティの心は言葉が通じなくても十分に感じられた。
 ガルガン村での滞在を振り返るとアクティビティの時間もアクティビティ以外の時間も、全ての時間が特別で貴重な瞬間であった。滞在した4日間のうち中3日はずっと悪天候で、雹が降ることも珍しく無く、部屋に籠って慣れない寒さをみんなで耐え凌いでいた。しかし、このついていないと思える状況は参加メンバーとゲームを楽しんだりダンスをして温まったり、他愛ない会話からアカデミックな話までじっくり話せる絶好の機会となった。ここで私は、間違いなくメンバー間の絆を深めた。それぞれの関心やこれからの進路、将来の夢、恋愛観など多くの話をネパール人学生と話せた時間はとても贅沢な時間であったと今振り返り強く思う。
 ホームステイ期間に実施した村人インタビューは3人ずつのグループに分かれて行われた。私のグループでは、主に職と食の観点に焦点を当て村人の幸せ観を探った。大雪の中朝から始めたインタビューで計6つの家庭に協力してもらうことができた。食の幅が狭く(ほぼ毎日ダルバート)、職がほぼ無い村に住む村人の方達に事前に作成していたいくつかの質問を投げかけた。驚くことにインタビューに答えてくれた全ての村人が村での生活に満足しており、幸せであると答えてくれた。そして回答の傾向をまとめている過程で村人は、自分たちの村での生活と他の環境を比べるということをしていないことに気づいた。彼らの物差しで彼らは幸せで、今に満足していた。幸せを感じるためには自分の中での満足度を高めることが必要であることをこの村人インタビューから学んだ。他人と比較して自分に落胆してばかりいる私に欠けていた村人のこの精神は、これからの私の状況や物事の捉え方に大きく影響を及ぼすだろう。
 幸せという広く深いテーマについて私たちは二週間という時間をかけてそれぞれ考えを巡らせてきた。幸せの形は人それぞれ違い、同じ経験をしていてもそれぞれ着眼点が異なるため、違った結論に辿りつくこともある。各々がそれぞれたどり着いた結論は全て素晴らしく価値があり、私は幸せを感じるためのメソッドをたくさん知れた。
参加メンバーと2週間という時間をみっちり共にし、支えられ、引っ張られ、いつのまにか私の心はすっかり開いていた。多くの刺激を与えてくれた参加メンバーには感謝しても仕切れない。振り返るとプログラム期間中の私はここ数年で最も心の感度を研ぎ澄ませて過ごしていたように思う。だからこそ恥ずかしくなるほど多くの刺激を受け、それをエネルギーに変えることができた。プログラム中に参加メンバーや様々な経験から得た刺激の数々は確実に、私の残された学生生活、そしてこれからの人生をも彩らせる材料となるだろう。最後にこのプログラムに関わる全ての人に感謝の意を込めて、報告書を終えたい。ありがとうございました。

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