私がこのプログラムに参加した一番大きな理由は、単に自分が東南アジアファンだったからだ。東南アジアに最初に魅せられた瞬間を、私ははっきりと覚えている。それは、母と父とインドネシアのビンタン島に3人で旅行に出かけた時。ビンタン島の無限に続いて見える砂浜で寝転んで海を見つめると、私が当時抱えていた家族、進路、友人に関しての悩みが、ちっぽけなものに思えて、もやもやとした気持ちがすうっと消えて無くなった。東南アジアのゆっくり流れる時間と、大きな空と、青い海と、優しさでいっぱいの現地の人たちのおかげで、私の心が溶かされたのだと思う。その後、多くの東南アジア諸国を訪れ、近い距離に位置する国々の、宗教、文化上での多様性を再認識し、魅せられた。そんな大好きな東南アジアという存在、その一部であるベトナムの大学生たちと交流をすることで、今度はどんな変化を私にもたらしてくれるのかな?と期待し、VJEPに参加した。
私がVJEPにおいて、非常に記憶に残っている出来事は、プログラム内の文化交流部分、特にそれぞれの国が相手の国のソウルフードや、伝統的な食べ物を作った時である。その時、私はベトナム人たちが、本当に日本の文化や日本人たちに興味があってこのプログラムに参加したのだと、強く感じた。このフードエクスチェンジと呼ばれるアクティビティでは、オンライン上でグループに分かれ、それぞれが食べ物の作成方法を口頭で教える、というものであった。そこで、びっくりしたのが、私は「いぇーいバインミー食べれるぞー」と喜び、昼食を作るような気持ちでバインミーを作成していた一方で、ベトナム人チームは、全身全霊でおにぎり、みそしるを作っていたことである。日本人チームが作成方法を教え、それにベトナム人チームが倣っている最中も彼らは、どうやって作るのか、お互いにディスカッションをし(かなり盛り上がっているように見えた)、楽しみながらも真剣な顔で作っていた。しかも、一番驚いたのは、おにぎりを作ろうとしても、どうしても米と米がくっつかないという理由で、お酢(ベトナムの参加者の一人はOil、油であると発言していたので、お酢なのか油なのかは未だに明らかではない)を使っていたと言うことである。それもそうだ。東南アジアの米は日本の米と違い、粘り気がすくない。にぎっても米と米がくっつかないのは当然である。それに対し、私たちがなにか言ったわけでもないのに、自らお酢(油)を使い(果たしてそれが正解なのかは疑問が残るが、それは私にとって世界一おいしそうなおにぎりにみえた)、いかなる手段を使っても相手国に根付いている食文化を体現しようとするところに、全てに対して真剣なベトナム人大学生の姿が見えた。
みなさんは覚えがないだろうか?中学生の時、合唱祭を真剣にやるのをどこか恥ずかしがって駄弁っている男子たちを叱りつける女子たちの光景を。このような日本での「あるある」はベトナムでは起こらないのではないだろうか、と感じた。「頑張ること」や、「真剣になること」は、ベトナム人にとっては「気恥ずかしいこと」では絶対になく、あたりまえのこと。もし問題が発生したら(今回はそれが粘り気の少ない米の種類であったのだが)、頭を使って、それを解決する。彼らの強い意思を強く感じた。
私は、今までの人生で何事も「なんとなく」こなしてきた。全力を出さず、なんとなく勉強し、小中高一貫校に入り、英語の勉強も、受験勉強も、何に対しても全力を出した記憶がない。「要領いいよね」とよく友達に言われ、それでも、特に嬉しい気持ちにはならなかった。むしろ頑張り方がわからなくて、他の友達が、どのくらい頑張っているのかもわからなかったからだ。でも、今回のVJEPで、頑張る学生を目の前にし、私ってなんてのらりくらりと雰囲気で生きてきたんだろう?と思った。私だったら、もしできないことがあれば、言葉は少し汚いが、「もうやらなくてよくね?」と言ったり、うんざりした気持ちになったり。よく考えてみると、私は合唱祭で頑張っても結果がでないことを恐れて、気恥ずかしく思って頑張らない学生と同じだったのかな、と考えて、少し反省した気持ちになった。
二度も東南アジアの雰囲気、または人に、自分を見直す機会をあたえられた私は、3年次には専攻として、アジア研究学を取ることも考えている。上記に述べたことだけではなく、今回のVJEPでは様々なことがあった。バディが私が粘土で作ったブサイクなミッキーを、こんなに可愛いものはみたことがないといってくれたり、ベトナムチームが作成した米津玄師のLemonのPVの完コピを見て人生で一番笑ったり、直接会えない分、自分を含めた参加者の間でモチベーションの問題が出てきたり。良いことだけではなかったけど、自分のなかで新しい発見があったり、間違いなく私の今後の人生の糧になることは、言うまでもない。
オーガナイザーのみんな、参加者のみんな(特にバディのタオ)、関教授、影でこのプログラムを支えてくれた方達、ほんとうにありがとうございました。