2020年10月18日日曜日

バングラデシュ BJEP 2020 (Bangladesh-Japan Exchange Project 2020) 報告書(2) 高橋雨川(上智大学外国語学部英語学科3年)「バングラデシュ、日本、自身について学びを深めた2週間」

 

はじめに

 
最初にこのプログラムを知ったきっかけは、大学で私が所属するゼミのメンバーの宣伝だった。正直なところを言うと、直感で、ほとんど反射的に応募した。バングラデシュの繊維業界、そして貧富の格差や労働条件の問題点についてはドキュメンタリー”The True Cost”を視聴して少しだけ知識があったこと、そして春学期の大学の講義でバングラデシュにおける女の子の家事労働者について調べたことも関係していたのかもしれない。が、とにかく「面白そう!」と言う好奇心だけで応募フォームを埋めた。今振り返って考えてみれば、そんな自らの心の声に純粋に従ったことが、大きな学びを得るきっかけになったのではないだろうか。このプログラムの実りは計り知れないものがあった。貧困、教育問題がテーマとして挙げられていたが、実際に話し合われたことは、その2つのメインテーマをはるかに超えるものだった。ジェンダー、格差、価値観、社会情勢、国際政治。改めて、社会問題はそれ単体で存在しているものではなく、他の要素や事象と複雑に絡み合っているものだということがわかった。またディスカッションを通じて学べたと同時に、遠く離れたバングラデシュにたくさんの友人を作ることができたのも大きな収穫だ。改めて、このプログラムの主催者である関先生、オーガナイザーの皆様、そしてすべての参加者に感謝したい。

 

日本とバングラデシュにおけるジェンダー問題について

 私が最も印象に残っているディスカッションは、2日目のジェンダーに関するトピックを取り扱った回だ。知識として、私は南アジア諸国における世界ジェンダー指数が年を追うごとに小さくなっている(つまりジェンダー平等達成に近づいている)こと、そして日本よりもずっと高い順位についている国が多いことを知っていた。しかし、世界経済フォーラムが行っている男女格差指数2018年において、日本の男女平等達成度が149カ国中110位なのに対し、バングラデシュが48位と、日本と比較してかなりのジェンダー先進国であることに驚いた。実際にバングラデシュのランキングはアジア諸国の中でも上位にあり、ジェンダーや性差別に対して人々の関心がかなり高いことがうかがえる。その証拠にディスカッションの中でも彼ら、彼女らはとても積極的に発言した。例えば、バングラデシュの政治界において女性の活躍はかなり保証されてきているという。現に2009年から首相を務めるシェイク・ハシナ氏は女性だ。しかし、日常生活レベルにおいては未だに女性が被害となる犯罪は絶えない。レイプ、ストーカーなどの性犯罪だけではなく、女性を狙って硫酸をかける(acid attack)といった残忍な事件もニュースで耳にすることがあるという。特に感銘を受けたのは、バングラデシュの学生たちが自国の問題を明確に理解し、その課題についてどのように取り組んでいこうか真剣に考えている様子だったことだ。私は現状について危機感を抱いてはいるものの、彼らのように当事者意識を持ち、主体的に問題を解決していこうという意欲に欠けていた。しかし、様々なディスカッションを重ねる事で、自分自身も行動を起こせる一人の「市民」として行動していく必要があると感じた。


自分の「特権」について考え直したきっかけ

 私は最終日のイベントの際、参加者の一人であるRajuさんのスピーチを聞いた上で発言をする、ディスカションチームに選ばれていた。そのため彼のスピーチを特に注意深く、丹念に聞いた。そして改めて、自分がいかに恵まれた立場にいるかという事が身に沁みた。今振り返れば恥ずかしい話なのだが、今まで私は、自分は周りの上智大生と比較し、不利な環境の中から受験を勝ち抜いてきたと思っていた。私の故郷である淡路島には塾や予備校といった勉強を支援する環境が薄く、通っていた公立高校の周りの生徒の勉強に対する態度はお世辞にも良いとは言えなかった。そんな中でもほぼ独学で上智に合格し、上京できたことは自分の中で一種の誇りだったのだ。しかし、Rajuさんの話を聞いてみると、彼の半生は私のそれよりも数倍壮絶だった。私も決して豊かな家庭に育ったわけではない。しかし、彼のように進学のために必要な試験の受験料がないということはなかったし、経済的理由で進路を変更しなければならないということも経験しなかった。つまり私は、自分自身が思っていた以上に恵まれた環境と家庭環境を持ち、周りからの応援や支援を受けて進学したのだ。ある種の「特権」を持っていたのである。この大きな気づきは、自分を見つめ直すきっかけとなった。自分が持っている特権を認識することで初めて、それを持っていない人に対して思いを馳せられる。他者のことを考えられるようになるということは、自分の世界が広がるのと同じことだ。このプログラムに参加して、私の世界はまた、一段と大きくなった。

 

[参考資料]

MEMORAVA 世界経済フォーラム 男女格差指数2018年度版

https://memorva.jp/ranking/world/wef_global_gender_gap_report.php

0 件のコメント:

コメントを投稿