Mero Sathi Project 2017 8月 報告書(1)
「ありのままの自分であること」
上智大学文学部英文学科1年
小林里実
私がこのスタディーツアーで強く感じたことがいくつかある。まず、彼らはありのままの自分を大事にしていた。一般的に日本人は謙遜をしがちだ。褒められても否定をする。否定をしないとナルシストだとか自分大好きと言われてしまう。だが、果たしてそれは悪いことなのだろうか。私は自分のことが好きだ。それは自分が人より優れていたり美しいと言うわけではなく、悪いところも含めた上で好きなのである。そういうわけで私は日本で生まれ育ったが、日本での生活に息苦しさを感じている。ネパールの人々はというと、自分のことを客観的に見て良いものは良い、悪いものは悪いと言う。謙遜をあまりしないところに私は非常に惹かれた。もしかしたら日本よりネパールに住むほうが居心地はいいのも知れない。
私はものをはっきり言う性格で、日本の友人からはあまり良くないことだと言われていた。しかし今回のネパールでのスタディーツアーで、日本での常識が大きく変わった。ネパール人メンバーは私のことを「強くて美しい」と褒めてくれた。今までにない経験で非常に驚いた。また、彼らは自分自身のことを大事にしていると感じた。
次に感じたのが、お金で買えないものがある、ということだ。日本、特に東京という大都会に住んでいると、お金の流れが速く、お金で買えないものはないと錯覚していた。実際東京ではそうなのかもしれない。しかしネパールでは違った。ポカラで泊まっていたホテルの下にあるレストラン青空にあるベンチに座り、何もせずただ空を見ていたあの瞬間は忘れることはないだろう。東京にいたら時間があるとついスマホを見ていたりするが、そんなものはいらなかった。そして何より、大事な友人と出会えたことが大きい。私は日本では友人は少ないほうだ。特に日本人との友人関係の築き方が下手なのかもしれない。だが、今ではネパールにたくさんの友人ができた。これはお金では代えられない大切なものだと気づいた。帰国して一か月が経つ今でも、相談に乗ってもらったり、電話をしたりする。このツアーで私の人生が潤いを増したのは明らかだ。
これはポカラに着いた初日に撮った写真だ。そして次の写真がシクリス村からポカラに帰ってきたときの写真だ。初日はぎこちなさが見て取れるが、二枚目には写真を撮られることにも慣れ、信頼する友人に囲まれた自分の姿がある。
実の兄弟姉妹のような関係になれて心から嬉しく思う。
そして最後に、障害を持つということについて感じることがあった。私の妹は重度の自閉症を患い、現在14歳だが脳年齢は1歳にも満たない。よって言葉を話すことができない。私はこれまでの人生で障害について考えることが多かったのだが、今回訪れたdeaf school での体験は今までの考えを変えるものになった。まず彼らは私たちと非常に積極的にコミュニケーションをとろうとしていたことに驚いた。私はネパール語の手話は知らなかったので、メモ帳を使い会話をした。彼らは私のメモ帳を使い、私の名前、出身、年齢、親の職業、兄弟の有無、Facebookのアカウントを聞いた。私が今まで出会ってきた障害を持つ人の大半は引っ込み思案だったため、彼らの積極性には驚かされた。また、彼らの優しさには感動させられた。人の痛みを知る人はそうでない人より優しくなれるのは本当なのだなと感じた。そしてdeaf schoolが全寮制なのは素晴らしいことだと思った。日本の特別支援学校は基本的に全寮制ではなく、自宅から通うか、施設から登校する。私の母はずっと妹を施設にいれるのをかわいそうだからと拒んでいた。だが、昨年末、母は持病の甲状腺障害が悪化し入院することになってしまった。そのことがあり母は妹を施設にいれることを考え始めた。だが、学校が全寮制であれば母はここまで悩まなかっただろう。特別支援学校の全寮制を日本も増やすべきである。
今回このツアーで得られた経験は本当に貴重だ。この経験を生かすために、まず行動を起こさなければならないと感じ、9月22日に東京ビックサイトにて行われたツーリズムEXPOジャパンのセミナーにてパネリストとして参加した。そこで今回のスタディーツアーで感じたことを、セミナーのテーマである「若者のアウトバウンド政策」と絡めて述べた。今回のツアーの参加者のような学生は海外に対して意識の高い人が多かったと思うが、若者のボリューム層はそれに当てはまらない。その理由を私なりに考えると、まず若者のリスク回避の傾向があげられる。失敗を極度に恐れるがゆえに、リスクがあることには挑戦しなくなったのではないかと考えられる。海外に行くリスクとは、例えば①海外に行く「意識高い系」は痛い存在と言われることがあること、そして②海外で就職する人より国内に目を向けている人のほうが出世する傾向にあることがあげられると思う。だが、海外に行くというのはそんなリスクよりもはるかに収穫があることだと私は思っている。それがスタディーツアーであっても、旅行であっても変わらないが、違う価値観、違う文化に触れることで自分自身や日本についてよく見えてくる。逆に日本という国に閉じこもってしまうと、自分自身さえも見えづらくなってしまうのだ。そして次に海外に対して敷居の高さを感じている人が多いように感じる。私の友人たちにも話を聞くと、必ずと言っていいほど「何か壁がある」と言う。
私にも同じように感じる出来事があった。私が高校2年生の時、トビタテ留学ジャパンという文部科学省が留学費を出すプロジェクトに応募した際、志望理由は「語学を学ぶため」ではいけないと教わった。語学を学ぶのは当然で、+αで学ぶものを理由としなければならないと言われたが、私は納得がいかなかった。日本は立派な先進国で、日本で学べないから海外に行くというものはほとんどないだろう。それなのに理由を作らなければ海外に行けないなら海外には行きづらいと感じていた。私以外の若者にも、「海外に行く」ということに壁があるのは、何か理由をつけなければいけないという義務感があるからなのかもしれない。しかし、そんな理由はなくても海外には行けるし、一度海外に行くと自分が変わることを実感できる。その感覚を現代の若者のボリューム層に伝えたいと思うようになった。今回のスタディーツアーに参加したことで、私はこのようなアウトバウンド政策について非常に興味を持つようになった。まだ構想段階だが、中高生に向けた出張授業を行う団体に所属し、積極的に伝えていこうと思っている。
最後になるが、私の人生を変えるきっかけになったこのツアーに勧誘してくれた関愛生さん、コーディネーター、関昭典先生、メンバーのみんなに感謝したい。
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