2017年10月1日日曜日

ベトナム VJEP 2017 報告書 (2) 坪井友里香(東京大学文科三類1年)「人として」

VJEP 2017-ベトナムプロジェクト報告書

「人として」

東京大学文科三類1年 坪井友里香

 
写真右が坪井友里香さん
とても沢山のことを学んだが、もっと多くのことを学べたはずだった。それが今回のプログラムを終えて抱いた、認めなければならない感想である。なぜこの機会を十分に生かしきれなかったのか、それは全て私の責任感の欠如から来る事前準備の不足やプログラム期間での軽率な行動のせいだった。とにもかくにもこのプログラムは、学べたことも、学べなかったことの原因も振り返るにつけ、とにかく「人として」ということを考えさせられた2週間だった。
 まずは、私がこのプログラムを通じて学べたことを述べていきたい。私がこのプログラムに参加した目的は、ベトナムという異文化に触れることで自分の視野を広げたい、というものだった。確かに、社会主義とその中に生きる人々(正確に言えば知識人だが)を肌で感じることが出来たのはとても貴重な体験だった。オーガナイザーさん達が何ヶ月もかけて練り上げてくれた計画を踏みにじって抵抗を許さないビンフック政府、身も心もすり減らして限界まで政府と交渉してくれたオーガナイザーさん。日本では今の所考えられない事態に、ベトナムメンバーが渇望していた民主主義や言論の自由を、私たちは持っているにも関わらず当然のものとして受け取り、その多くを無駄にしてしまっていると非常に申し訳ない気持ちになった。高度な知的水準を誇る大学もそうだ。ベトナムの友人達が渇望し、そして自ら作ろうとしているもの達を、私たちは何の努力もなしに得て使うことが出来るのだから、自分たちの恵まれた環境に感謝してそれを最大限行使しなければいけないと、非常にモチベーションの高まる体験であった。
 しかし、実のところ私がもっと痛切に感じたことは、そういった日本とベトナムという国の違いによる社会制度的な「異」の部分ではなく、そのもっと手前にある普遍的な「人」の部分だった。
 このプログラムを通じての1番の収穫は何と言っても、何につけても尊敬できる、とにかく優しく、明るいのに真面目で聡明なベトナムメンバー達と知り合い、心から信頼出来る友達となれたことだ。このプログラムを通じ感じたことは正直言語化することが難しいのだが、ただ一つ明言できることは、私はあのベトナムメンバー達のことが大好きで絶対にまた会いに行きたいということだ。日本メンバーが疲れを隠せない時も、彼らも同じだけ疲れていただろうに、常に私たちを気遣い優しく明るい笑顔を見せてくれた。オーガナイザーのみんなは、無給にも関わらず私達のために身も心もすり減らし政府との交渉を続け、夜遅くまで限界まで努力してくれた。そして私が「大丈夫?」と聞くと必ず「大丈夫」と答え、「無理しないで」と言うと必ず「これは私の責任だから」と答えるのだ。年もほとんど変わらない彼女らが、強い意志と責任感、そして何より私達のことを思って限界まで努力してくれる優しさをもってこのプログラムを作ってくれたことに、本当に感謝してもしきれず心から尊敬すると共に、決して同じことが出来ないであろう自分が恥ずかしくて、途方に暮れるような気持ちになることもあった。
 ここで私が強く思うのは、私は彼らがベトナム人であったから好きになったのではなく、彼ら一人一人の人としての魅力にとりつかれて好きになったのだということだ。日本とベトナムという国の差はあれど、そういう国・ましてや先進国か途上国かという「異」の問題の前に、個人個人の人としての美しさというものが、何よりも重要で決定的な意味を持つものなのだと、当たり前のことながら身にしみて実感することとなった。私達はとかく「国民性」などというもっともらしい言葉、そして国内的には大学名などで、人の性質をその人の所属組織に帰する形で先入観をもって人と接してしまう。そのような凝り固まった考えがなんと未熟なものだったのかと、目から鱗が落ちるような心地がした。
 さて、私は冒頭で「とても沢山のことを学んだが、もっと多くのことを学べたはずだった」と述べた。結論から言えば、これはすなわち、このどこまでも濃い2週間の体験の中で、私の人としての欠点がまざまざと露呈し、私自身がベストのパフォーマンスを行えなかっただけでなく、多くの人に迷惑と心配をかけてしまったということだ。
 まずは準備不足。私は日本のジェンダー問題についてプレゼンする予定であったが、そのプレゼンの提出期限を過ぎてしまった。それだけではない。学校のレポートがベトナム出発までに終わらずベトナムで作業しなければならなくなり、その結果いくつかの企画に参加できなくなってしまったのだ。自分の責任感のなさ、計画性のなさに本当に自分が嫌になったし、何よりもそのことで日本人・ベトナム人の双方のメンバーに迷惑と心配をかけてしまった。人としてあまりにも欠けたことだったと、心の底から申し訳ない思いでいっぱいだ。
 また、集団行動であるにも関わらず、自分のことで精一杯になってしまい、周りのことを考えて行動できなかった。例えば具合が悪くなってしまった時にいきなり体調不良を訴えて周囲を混乱させたり、なぜだか分からない涙が出てきて急に泣き出してしまい周囲の雰囲気を悪くしてしまったり…。もう自分でも自分が嫌すぎて、周りに申し訳なさ過ぎて、後悔してもしきれない。この文章を書きながらも、振り返りたくなくて仕方なくもういっそのこと忘れてしまいたいとすら思うのだ。
 しかし逃げてしまっては本当に何の意味もない。私はこのプログラムで「人として」本当に尊敬できる友達に沢山出会えた。この友たちを宝に、未熟な自分を乗り越え「人として」成長しなければならない。変わらなければならないと強く辛く心に刻み込んだ2週間であった。

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