<はじめに>
私は2023年12月23日〜12月30日の8日間に渡って開催されたバングラデシュ・日本国際交流プログラム(BJEP2023)に参加しました。この報告書では、プログラムに参加することになったきっかけ、プログラムの内容、プログラムを通して学んだことについて書きたいと思います。
<BJEPに参加することになったきっかけ>
私はプログラムに参加を決めた日のことは忘れもしません。2023年10月9日、大学から帰宅し、家で自習をしていた私のもとに妹から着信がありました。電話に出ると「お姉ちゃんバングラデシュ行かない?大学の先生(関先生)がバングラデシュに一緒に行く人を探しているけど、お姉ちゃん行きたがっていたよね?私も行きたいけど、お姉ちゃん行かない?」と言われました。妹が私に連絡してきたことには理由がありました。私は大学で4年間バングラデシュの国語であるベンガル語を専攻していたのですが、コロナ禍と学生生活が被り、現地に渡航出来ずに学部を卒業してしまっていました。妹はそのことを知っていたので、すぐに情報を伝えてくれたのです。その場にいた母は「こんないい機会ないよ、良かったね」と。しばらくして家に帰ってきた妹からも「お姉ちゃん絶対行きなよ」と。そこからは話が早く展開していきました。その日のうちに妹が関先生に連絡を取り、翌日には関先生と私がつながり、渡航の意思を伝え、航空券を予約しました。妹は残念ながら渡航時期に日本で外せない用事があり、今回の渡航は叶いませんでしたが、妹のおかげでBJEP2023への参加が決まったのです。この頃はバングラデシュで何をするのか全く分かっていませんでしたが、とにかく自分が学んできた言語が話されている国に行ってみたいという気持ちが強く、航空券を予約したその瞬間から12月が待ち切れないほど楽しみになっていました。
<プログラムについて>
今回参加したプログラムは、AAEEとSwitch Bangladesh Foundation(以下Switch)の共同企画によって開催されました。Switchとは、バングラデシュにおいて貧困が親から子へと続くサイクルを断ち切ることを目標とし、質の高い教育を子どもたちに無償で提供しているNGOのことです。教育の他、衣類や教材等を寄付によって集め、生活に困っている人々に低価格で販売したり、不要になった衣類をリサイクルし新しい製品を生産したりするなど、様々な社会課題に対する取り組みを行っています。今回のプログラムではバングラデシュにおけるAAEE関係者、Switch関係者、そしてSwitch Schoolに通う子どもたちと多くの時間をともに過ごしました。8日間のプログラムと9日間の滞在を通して主に以下のような活動に取り組みました。
DAY1
DAY2
2日目には、バングラデシュと日本の文化交流会が行われました。学校の近くにある広場にSwitchの関係者、子どもたちが集まり、子どもたちによる英語やベンガル語での詩の朗読、歌や踊りのパフォーマンス、劇、ファッションショーなどが行われました。我々日本チームはソーラン節や土壌すくいを踊ったり、「花は咲く」を歌ったりしました。最後に子どもたちと一緒に東京音頭を踊り、お互いの文化を一緒に楽しみました。
DAY3
3日目は、午前中に学校近くの船乗り場から10分ほどかけて場所を移動し、約60人の子どもたちと一緒に野外学習を行いました。子どもたちと森林の多い場所と少ない場所に移動し、森林の働きについて暑さの感じ方の違いを実際に経験することを通して学びました。野外学習の終わりには日本チームによる30分程度の授業を行いました。参加型の授業ということで、日本に来た時に必要となる簡単なフレーズを教えたり、ジャンケン大会を行ったりしました。
DAY4
DAY5
5日目は、午前中にSwitch schoolを訪れ、子どもたちによって作られた科学展を鑑賞しました。低学年から高学年までの子どもたちが2~4人で1グループとなり、社会に存在する様々な問題に対する解決策を考え、作り上げたシステムについて発表をしてくれました。子どもたちの発表を聞いた後、BJEP国際交流プログラムに長年携わられているMahboob Hossain教授に挨拶するためBRAC大学に移動しました。
DAY6
6日目は、Switchの創設者やSwitchとAAEEの活動に関わっているバングラデシュのメンバーにダカ大学を案内してもらいました。教授と少しお話をする機会を頂き、ご挨拶をさせて頂きました。
DAY7
7日目はバザールに参加しました。ここではSwitchに寄付された衣類等を低価格で販売するお手伝いをしました。誰かにとっては必要なくなったものを、必要としている人々の手に渡すことにより、廃棄物として捨てるのではなく、新たな資源として活用できる仕組みを作っている現場では、年代問わず多くの人が商品を手に取り、購入していました。
DAY8
8日目はプログラムの最終日として、まずはSwitchの今後の活動促進のために必要なことについて話し合うための会議に参加しました。NGOとして活動する上で必要となる資金を確保するために何を行うことが大事なのかということについて関先生を筆頭に考えました。会議後はプログラムの成功を祝いPitha Festivalを開催しました。”Pitha Festival”とはバングラデシュで冬の時期に行われるお祭りのようなもので、“Pitha”を用いたパンケーキや餃子のような料理を各々が作り、それを持ち寄りみんなで食べながら楽しむ時間を意味します。我々は日本で親しまれているおにぎりと味噌汁を振舞いました。
DAY9
滞在最終日は、スラム街を訪問しました。スラム街にあるSwitch schoolを訪問し、そこで勉強をしている子どもたちと交流しました。その後、普段訪れていた学校に戻り、先生や子どもたちと最後の挨拶を交わしました。帰宅し荷造りをした後、我々の滞在を常に支えてくれたメンバーへ感謝の意を表し、日本へ帰国しました。
<プログラムを通して学んだこと>
この報告書の最初で述べたように、私は単純な理由から、バングラデシュを訪れることを決め、このプログラムに参加しました。今回のプログラムはAAEEとSwitchの共同企画でしたが、関先生に出会うまで、AAEEの活動やその意義について何も知りませんでした。したがって、渡航を決意した段階では、現地で何をするのか、どんな活動を行うのか全く見当がつきませんでした。渡航前には、バングラデシュのメンバーが企画したプログラムの詳細を共有するミーティングがあり、そのミーティングを通じて、滞在期間中の活動内容は理解できましたが、自身の学びの目的や日々の過ごし方についての目標はまだ持っていませんでした。正直に言いますと、「何を学びたいのか」という問いに対して、しばらく考えましたが、明確な答えを見つけられず、そのまま渡航日となりました。
実は、今回参加した日本チームのメンバーは、私以外、以前の活動でバングラデシュチームのメンバーと交流がありました。私は彼らと全く交流がなかったので、「どんな人たちと活動するのだろう」という疑問がありました。そこで、渡航日の成田空港で、関先生に質問してみると、「彼らはすごいよ、頑張って生きている人たちだよ」という答えが返ってきました。その時私は、「頑張って生きている」の意味がなんとなく分かるようで分からなかったのですが、いざバングラデシュに足を踏み入れ、彼らと話をしたり、これまでの人生や将来の夢を聞いたりしながら交流しているうちに、関先生の言っていることの意味が自分の中で理解できるようになりました。
まず一つ、私が一番心に残った学びは彼らのタフな精神力です。私は義務教育課程を修了した後、高校、大学、そして大学院へ進学することへの選択肢を両親から与えてもらえていました。非常に恵まれた環境で育ってきたと思います。しかし、恵まれた環境であるが故にそのありがたみを十分に理解せず、時間を有効活用できない時期を過ごしてしまったことがありました。また、よく人と自分を比較し、落ち込んでしまうこともありました。しかし、バングラデシュチームのメンバーの話を聞いていると、しっかりと前を向いて挑戦することの素晴らしさに気付くようになりました。彼らの、どんなに辛い状況でも、難しい状況でも出来るまで挑戦するその精神力の強さには全く敵わないと感じましたが、彼らの話一つ一つは私にその大切さを教えてくれました。自分が何をしたいのか、どんな目標を持っているのか、他人と比較せず自分自身と向き合い行動していくことの重要性に気付かせてもらいました。
次に、9日間を通し、時間の使い方について新たな視点を得ることができました。私は一つのことに集中すると、そのことをこなすことに必死になってそれ以外のことを考えたり、楽しんだりする余裕が持てなくなることがあります。その背景にある考え方は「まずはこれを終わらせるべき」というような優先順位が自分の中にあるからです。また、将来についても、ある「型」にはめて考えることが多いです。これも、「こうするのが当たり前/こうであるべき」というような固定観念が自分の中にあるからだと思います。しかしながら、彼らとの交流からは、忙しさの中でも周囲とのつながりを楽しむことの重要性を感じました。「時間に追われていると思わない、一つ一つ、その瞬間を楽しもう」、そのような様子が伝わってきました。もちろん、優先順位を設けて様々なことをこなすことは非常に重要ですが、それを理由に人とのつながりや得られるかもしれない経験を逃すことは惜しいことだと感じました。
このような気付きは、このプログラムに参加しなければ今の時期に得られなかったことだと思います。新たな価値観や考え方を教えてもらうことができました。渡航前、何を学びたいのか、答えが出ないままの参加となりましたが、現地に行き、直接交流し、はじめて気付くことは想像以上に多かったように思います。今後も自分の中に新しい気付きを得るために、このような機会に積極的に関わりたいと思うようになりました。
最後に、今回のBJEP2023への参加の機会を与えて下さった関先生、滞在をサポートして下さった皆様、ありがとうございました!
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