<はじめに>
私は一般社団法人アジア教育交流研究機構(以下AAEE)とSwitch Bangladesh Foundation (以下 Switch) の合同プログラム、「BJEP2023」に参加した。この報告書では、プログラムへの参加経緯とプログラムを通して学んだことを記す。
<参加経緯>
2023年秋、ある日関先生が「バングラデシュに行きたい人いませんか」とSNSで呟いていた。その瞬間に私はバングラデシュ渡航を決意した。なぜなら、コロナ禍真っ只中の2020年夏にAAEEの学生アシスタントとして活動していた私は、当時危険レベルが高く渡航できなかったバングラデシュとの初国際交流オンラインプログラム”BJEP”を企画し、それをきっかけにいつか絶対バングラデシュに行こうと心に決めていたからだ。
本プログラムには、以下の3つの目的を胸に参加した。
① バングラデシュの魅力と課題を見つける
② 宗教に基づいた社会、人々の暮らしを感じる
③ 将来、国際交流・国際協力・教育で何をしたいかを考えるための経験を得る
私はバングラデシュについてほぼ無知だったため(BJEPを企画運営したが、当時は運営することに必死で内容に注目する余裕がなかった)、あえて何も調べず、国の良さと課題、そして私にとって人生初となるイスラム圏国家を五感で感じようと考えた。そして、高校1年時から教育と国際的な活動に関心を持ち、現在まで幅広く学んできた私は、具体的に何をしたいのか分からない状態だった。そこで、今回のプログラムを将来やりたいことを再考する糧にしようと考えたのだ。
実際プログラムに参加すると、この3つを交差させながら感じたこと/学んだことが多かったため、「①バングラデシュの魅力と課題を見つける」を基にまとめて記そうと思う。
<学び>
私にとってのバングラデシュの一番の魅力は、「人々が常に全てにベストを尽くしていること」だ。9万人の受験者から200名弱しか受からない大学受験に優秀な成績で合格した人、家族に進学を反対され涙しながらもどうにか大学院まで進学し、海外で勉強するという夢をもうすぐ叶えそうな人、常に国の発展を考えて何種もの業界を経験している人など、私には到底できないほどの努力をして、苦労や挑戦を乗り越えてきた人たちだった。そして、彼らは大きなライフイベントだけでなく、いつでも何にでも全力である。例えば、1日がかりの遠足の最後に1人一役を演じるゲームを本気で行ったり(約40名の全ての演技を皆で最後まで盛り上げた)、空き時間にAAEEとSwitch!で新しい事ができるか相談したり、はたまた遠足から帰宅後、クリスマスパーティーを行うために、18時から6時間買い出しと準備に時間を費やし、明け方までパーティーを楽しんだりした。このようにどの瞬間でもベストを尽くし、自ら人生に彩を与えながら常に何かを得ようとしている彼らの姿に感銘を受けた。
それと同時に、私も彼らと一緒にひとときも欠かさず全力で10日間のプログラムに取り組んでいると自覚した時、いつからか物事に優先順位をつけて調節していた自分は、本当は得られたものや機会を逃していたのかもしれないと感じた。そして、あるメンバーは、ある日私に「アッラー(神様)は自分に役割を与えてくださっている。僕は夢を大きく持ちながらも自分の役割を全力でこなし、あとは結果を待つだけだ」と教えてくれた。その時、私は彼らが常にベストを尽くせる理由がなんとなく分かった気がした。彼らの人生の土台にはイスラム教の教えがあり、それを強く信じている。だからこそ、人間の弱い部分にも負けない精神力があるのだ。私は特定の宗教を信仰していないため、目には見えない絶対的なものを信じ、果敢に行動できる彼らの強さが羨ましかった。そして、今後はより多くの学びと何か良い機会を得られると信じ、全ての出来事を大切にして、全力で行動しようと心に決めた。
本プログラムでバングラデシュの、あるいは国際的な課題の中で最も衝撃的だったのは、最終日に訪問したスラムでのことだ。スラムを訪問している間は、ショックで涙が込み上げてきた。目の前に広がる光景を受け入れることができなかったのだ。女性がゴミの山からポリ袋を集めているのを見ながら、この現実はただ彼らが恵まれなかったのではなく、私が引き起こしている問題であるということを考えていた。
日本に住む私たちの中には、ゴミの分別を行うことで環境に良いことをしていると思っている人も多い。しかし、プラスチックゴミの半分以上は燃されて熱回収され、廃プラスチック輸出量は世界2位である。輸出されたプラスチックの行方はほとんどの人が気にしない(私もこの現実を目の当たりにするまでその1人だった)。私はこの問題の加担者であるにも関わらず、そこに数分しかいない訪問者としてスラムを見学し、そこに住む子供と写真を撮り、何もできないままその場を後にした。無力感がすごかった。バングラデシュメンバーが色々説明してくれて、私に意見を求めてきたが、私は涙を流さないことに必死で何も答えられなかった。環境問題というとスケールが大きく漠然とした印象があったが、今後は自分の行動が具体的にどのように社会に影響をもたらすのかを学び、意識しながら生活してゆきたい。
また、他にもスラム街にある学校を訪れ生徒と交流したり、その後そこに住む人々のお話を聞かせていただいたりした。その中で常に感じていたのは、とても恵まれた環境で育ちながらこの現実を目にする機会を得た自分だからこそ、彼らのために何かすべきだということだ。自分で描いた絵をキラキラした笑顔で見せてくれた子ども達や、私と同じ23歳で3人の子供を育てる女性、教育や政治にしっかり意見を持つ女性など、皆同じ人間としての価値と権利がある彼らは、現在トタン屋根で作られた毎年洪水で浸水する家で、夏は40度を超える中、1つのベットの上で家族全員で寝食を共にしている。彼らのような人々(スラムに住む人だけでなく中間層の人々もこのような生活をしている)の人権を守る十分な社会的サポートと、今回目の当たりにした現実を引き起こしている世界中一人一人の意識改革の必要性を強く感じた。
私はこのような課題を解決するためにも教育は大切だと考えていた。途上国の教育現場を見るために本プログラムに参加したわけだが、このようにスラム街などを訪れる中で、教育の重要性を改めて感じた反面、複数の課題が複雑に交差しているのを目にした。そして、「教育を量・質ともに向上させたところでこの国に根深く残る問題は解決するのか?」と何度か疑問に思った。しかし、Faysalさんの「人、社会、国創りの全ての始まりは教育だ。」という言葉から始まった彼の教育に対する熱い思いを聞いて思い直すことができた。すぐに結果が見えなくても、彼のように教育に情熱を注ぎたいと思った。
あと2ヶ月と少しで日本で社会人として働き始めるが、今回の想いを忘れずに将来は教育分野での国際協力、また、国際交流という2方面に携わりたい。この想いを忘れないための方法も、今回彼らから学んだ。それは、躊躇せず相手に連絡を取り、人との関係を大切にすること、そして、定期的に現場に足を運び現場の情報を得続けることだ。今回出会った彼らとの関係を大切にし、国際協力と国際交流の現場に足を運ぶ事を継続し、具体的にどのように関わってゆくか考えてゆこうと思う。
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