2020年10月30日金曜日

バングラデシュ BJEP 2020 & ベトナム CVJ 2020 参加報告書 中臣亜美(国際基督教大学1年)

 東京五輪延期、入学式中止・オンライン授業完全移行、全面的な海外渡航の禁止。

  突然訪れた未曾有のコロナ禍と共存する道を必死に探す、2020年夏。国際交流に対し諦めの空 気が蔓延する中、握手もハグもできない私たちの最終手段はオンラインでの対話なのではない か、そう気づいたConnect! Vietnam-Japan (CVJ)とBangladesh Japan Exchange Program (BJEP)の体験について記す。 

 例年通りのプログラムであれば、自分の足でベトナム・バングラデシュへ赴き、様々な都市を 回り、異文化に触れることでそこに住む人の暮らしを感じることができた。また、両国の参加 者と長期にわたり交流活動に専念しながら、共同生活・濃密な交流ができる空間に身を置くこ とができた。しかし、オンライン上で自を魅せ、異を知る方法はあるのだろうか。両プログラ ムに参加するにあたって、いかにオンラインの壁を乗り越えて自分とは異なったものや違いを 受け入れ、いかに自分や自文化を相手に魅せるかを考える必要があった。 

 私は対面での交流からオンラインでの交流に変わって、交流の場がより業務的になったことを 感じた。例年通りであれば、プログラムの合間に参加者同士で気軽に会話をすることができた が、オンラインとなると時間通りに全員がZoomに集まり、オンラインならではのコミュニケー ションの違和感と不自由さを感じながら淡々と業務的にプログラムが進め、時間が来れば皆が Zoomから離れる。効果的な対面での異文化理解や異文化コミュニケーションを図るために自己 開示が大きな要素になるのだが、オンラインでの対話を活性化するにおいても自己開示を促す 工夫が必要不可欠だ。自己開示をすることによって、少しでも先入観から生じる誤解や差別、 そして偏見をなくし、お互いが対等な関係を築くことに繋げることができる。オンラインでお 互いの文化や価値観に触れる機会を作り出し自己開示を促すことで、日本とベトナム・バング ラデシュの参加者双方の視野を広げ、対等な関係を築くことが欠かせなかった。 

 両プログラムで、人と人が実際に交流し、文化の一側面だけでなく、多様な側面について伝 え、受け入れることができたと思う。私は、イスラム教と聞いて真っ先に連想するのがヒジャ ブだった。そして、私の中でのヒジャブのイメージは女性の抑圧の象徴であった。 

「ヒジャブは女性抑圧の象徴なのか」私は一歩踏み込んだ質問をぶつけてみた。 

 「自分はヒジャブの着用を自ら選択し、ヒジャブを通してムスリムとしてのアイデンティティ を示している」と返答したダッカ大学に通う女子学生が印象的だった。宗教的・文化的価値観 や家族の影響を多少は受けながらも、ヒジャブは女性自身で選択をすることができるのであっ て、強制されている訳ではないのだ。当然、バングラデシュでは様々なジェンダーの問題が存 在し男女平等が完璧に成立している社会ではないが、ヒジャブが女性を抑圧しているというイ メージとは全く違う現状があった。実際にバングラデシュでムスリムとして生きる女性との対 話を通して、私は自分の持っていた固定観念がメディアのイスラムに関する一般化によって形 成されたものだと認識をした。よって、「抑圧されている可哀想な女性たちに私たちの進んだ 文化を伝えることで助けなきゃ!」というような論理は自分の価値観の押し付けに過ぎず、相 互理解を深めるためには人同士の直接的な価値観の共有こそが重要だとひしひしと痛感した。 事前準備と1週間に渡るプログラムを通じ、私をはじめとする参加者は日本中、ベトナム・バン グラデッシュ中の想像を超えた多様性を持つ者と対話し、自分の内にあった「当たり前」を壊 す時間を過ごすことができた。両プログラムは、「人」に近く関わることができ、かつ文化芸 術交流・知的交流といった多様なフィールドからアプローチをすることができる点で、真の相 互理解を達成できると実感した。プログラムの時間外も深夜まで人生について、学校につい て、社会について、恋愛について、好きな本について真剣に語りあって、よく笑った。両プロ グラムには、たとえオンラインであっても自分の全てをさらけ出し、それを受け容れてくれる 環境があった。オンラインであっても、最終日に皆で名残惜しみ、「人生に一度の経験」とし て参加間に国や距離を越えて生涯の絆を形成することができたのだ。 

 CVJとBJEPでの経験から、オンライン国際交流はこれまで行われてきた形式の国際交流が困難 な状況下で新しい価値を生み出していると確信する。コロナ禍により「オンライン」という手 段が私たちにとってより一層身近なものになった今、この手段を活用すれば気軽に国内外の 人々の世界観や視野を広げ、相互理解を促進することができるという気づきを得られたこと は、私にとって大きな糧になった。

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