2024年11月1日金曜日

VJEP2024 報告書 「教育活動と交流を通して」 (筑波大学 国際総合学類2年 大山 陽)

   


 ベトナムで過ごした
14日間は、私にとって苦楽に満ちた濃い毎日であった。スケジュール通りにも思い通りにもいかないことばかりの連続で、オーガナイザーの方々や様々な教育機関、ベトナム政府等によって支えられ作られたプログラムであることを感じながら、時間やら周囲の人々やらに置いて行かれないよう必死だったことを覚えている。こうした多くの人々の尽力によって成り立ったこのプログラムにおいて、参加者として私が何を得てこれからどう活かそうと考えているのか書き記そうと思う。 

 まず私には、国際開発に携わるという人との関わりや語学力がなければ成立しないような夢があり、その夢が今の自分では到底叶えられないことを自覚していることと、その視野を広げるために参加を決めた。結論を述べると私という人間は渡航前と後で大して変わっていないのだが、本プログラムのテーマである教育とベトナム人との交流を通して得たことは間違いなく視野を広げてくれたと感じている。

プログラムのメイン活動であった小学校とボランティアクラスにおける授業を担当した私は、この体験から教育の重要性を考えた。最初に授業を行った小学校では、子ども達が皆エネルギッシュでこちらの質問に対して自信を持って回答し、授業終わりには私達にサインを求める等外からやって来た人間に積極的に関わろうとする姿勢が見てとれた。一方、小学校に比べ設備が不十分な環境で授業をしたボランティアクラスはとても静かだった。私達は小学校訪問時よりも近い距離で生徒達と交流をしたが、活発さや外から来た人間に対しての好意的に関心を持っている様子はあまり感じ取れなかったように思う。生徒が緊張しやすい環境であったにしても、同年代の子ども達の置かれた教育環境を比べた際の差というのは明らかで、幼少期に受ける教育とそれが子どもに与える影響について考えさせられた。環境が全てと言うつもりはないが、この二か所を比較した際、少なくとも自分の力では学ぶ場所を選択出来ない幼少期において受ける教育は質の高いものであるに越したことはないと感じた。どこにでも教育格差というのは存在していて、質の高い教育が必要であることは自明である。しかし、現場での授業を通し実際の状況や格差がどれだけ深刻で、ましてや今ある教育システムを改革しそれを持続させるなんてことがいかに困難なのかを思い知らされたのに加え、一回きりの授業が生徒にとっては思い出くらいにしかならないのかもしれないと考えると、テーマであった「持続可能な開発のための教育」に沿った活動をしたとは言えない。ただ、ここで他のアプローチをすることも今すぐ解決できるようなアクションを提案することも容易ではないと感じたし、結局は地道に改善策を探りながら教育の重要性を訴えていくことが不可欠であるという結論に至った。同時に、国際開発に関連する人間開発の面で、質の高い教育が重要であることと教育現場の改善にどうアプローチするのか等についての視野が広がった気がしていて、この体験は私に新たな発見と興味をもたらしてくれた。

 ここまでテーマに着目して話を進めてきたが、今度はベトナム人との交流について触れていきたい。彼らは一貫して活気に満ちた人達で、段々と距離を詰めたというよりも常にオープンマインドな姿勢に引っ張られるようにして仲を深めた印象がある。共に生活する中で、彼らが非常に広い視野を持ち好奇心を抱いていることと、与えられた場所で様々なことを学び吸収してやろうという気概を強く感じた。特に、最後に行った模擬国連は準備時間が少なく課題も複雑であったが、彼らは担当する国の政策や問題意識を深く学び、終始勢いを落とさずに遂行していたのだ。母語でも困難な議論を第二言語である英語を用いて積極的に自分の国の意見を主張する姿には本当に驚いたし、これからの国際社会を生き活躍するのに何が必要なのかを改めて認識できた。時に、日本人とベトナム人との間にある大きな価値観の差を目にしてそれを受け入れ難いと感じることもあり、異なるバックグラウンドを持つ人々との交流は常にポジティブなものとして捉えられるわけではなかった。しかし、受け入れられないと思うこともまた知らない自分の価値観を知ることに繋がっていて、違いを受け入れる必要があるように思いこんでいたがそうした違いを認めることに意識を傾けてみたいと思う。

プログラムでは、ここまで記してきたこと以上に新たな発見があり全てが貴重な経験であったとともに反省している部分も多くあり、活動を通して自己成長した気でいても日本というComfort Zoneにいながら内気な自分がいることは変わっていない。ただ、こうした活動の経験を伝えることや自分の意見を共有するにあたりこの14日間で得た学びと、そこから派生していく発見や物事の見方を念頭に置きながら今後の取り組みに繋げていきたいと考えている。

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