今夏の渡越は私にとっては初めての海外経験ではなかったが、確実に他ではできない貴重な経験ができたと自信を持って言える。序盤は二週間の滞在期間が本当にいやらしいほど長く感じた。個人的に、プログラム開始4日目の夜に(おそらく食事のせいで)体調を崩したということもあって、このまま後10日間日本に帰ることもできず、思っていたよりも食事が合わないベトナムで過ごさなければならないと考えると気が遠くなった。ホームシックになったことはなかったし、海外にも慣れているのだ、という根拠のない自信を抱いていたのも追い打ちとなった。しかし、途中から体調不良と共存しながらもなんとかビンズオン省での小学校・ギフテッドの高校・チャリティークラスの訪問をやり通し、集大成である模擬国連を完遂し、最終日に空港では日本に帰りたくないとまで思えたベトナムでの二週間は波瀾万丈であったが自己成長につながる鍵となる経験でもあった。
ベトナムは人も街もにぎやかで活動的で絶えず前進をしている、そんなイメージを持った。ベトナム人参加者の第一印象は、日本人メンバーがきっと口をそろえて言うと思うが、本当に明るくフレンドリーであることだ。彼女たちのいる空間は活気があり、いつも楽しそうに振る舞っているのを見るとこちらも自然と笑顔になる。ベトナムにいる間でかなりそのノリに慣れたので日本でも明るい盛り上げ係になろうかと思ったが、いざとなるとやはり難しい。加えて、彼女たちは必然的に自分を異なる視点から見てくれて思ったことは正直に伝えてくれた。私は無意識のうちに眉毛をしかめてしまう癖があることに気づかされたり、自分の表情や仕草について新鮮なコメントをもらえたりと、日本ではなかなかできない経験ができて面白かった。また、彼女たちと日常会話する中でお互いの文化や教育制度の違い、それぞれの国の社会問題について少しではあったが語り合うことができた。英語でのコミュニケーションはアクセントの違いがあって思った以上に苦労したが、このプロセスを通じて自国に対する自分の知識不足を痛感したり、当たり前だと思っていたことに対して「なぜ?」と聞かれると自分には意見がないことに気づかされたり、日本の話題についてベトナム人の視点を教えてもらったり、一瞬一瞬にたくさんの学びがあった。
さて、二週間に渡る学術的な活動を通して、私は何を学んだのだろうか。帰国直前に日本人だけで振り返りをしたときに、私は14日間で何を得られて何を残せたのかが正直わからなくて内容のあることをほとんど話せなかった。確かに私たちは現地でビンズオン省の学校に赴いて異文化交流のための授業をしたり、エリート教育を受けてきた高校生と一緒にディベートをしたり、ホーチミンに戻ってからは模擬国連も行ったが、これらの活動が一体どのような意味を持つのかあまり理解できていなかった。これらは単発的な活動であって本プログラムのテーマであった「持続可能な開発のための教育」とは違うのではないかとも思っていた。もやもやした気持ちを解消するために、帰国してからもしばらくこのことについて考えを巡らせてみた。
「持続可能な開発のための教育」を実現するにはどうすれば良いのか。少し話が飛躍してしまうが、現在私が考えていることは次の通りである。一人一人(もしくは数人グループ)の行動は、それ単体で見たときには意味がないほど微々たるものであるかもしれない。例えば、VJEP2024の活動ならば、ビンズオン省の富裕層の子供たちが通う小学校と生活が困難な家庭の子供たちが通うチャリティークラスでそれぞれ日本文化を紹介する授業を行ったことや、ギフテッドの高校で生徒たちと一緒にアカデミックなアクティビティをしたことが当てはまる。これらは一度きりの活動であって持続可能性を問いただされたら反論は難しいが、そこは問題ではないと私は思う。世界に大きな影響力をもたらすムーブメントは、もとをたどれば一人の人間の行動に行き着く。だから、一人一人の行動・意識は決して無意味ではない。自分一人で抱え込んでいてはせっかくの行動・意識はそこで途絶えてしまうけれど、それを他人と共有すれば課題意識は広がるし、ドミノ倒しとなって社会が大きく動くきっかけになる可能性を秘めている。重要なのは個々の小さな活動を共有すること、問題意識をたくさんの人に発信すること。互いに共有することで学べることは無限大だ。私たちに今求められているのは、活動自体の成果ではなく、その活動を通して学んだこと、考えたこと、疑問に思ったことをありのままに共有することではないだろうか。そう考えるから私は自分がベトナムで行った活動を報告会などの機会を通じてたくさんの人に知ってもらい、日本とベトナムの教育問題や価値観の違いなどを発信したい。これも教育の一つの形なのではないか、とも思う。
VJEP2024で知り合いたくさんの時間をともに過ごした13人の仲間たちには様々な場面で助けられ、今後のモチベーションとなる刺激も山ほどもらった。両国の参加者がそれぞれ7人ずつで人数比がちょうど良く、様々なアクティビティを協力してこなしていったことで短期間でも私たちは確実に関係性を深められた。高校生の時の海外研修では国際交流の観点からは満足いく経験ができなくて、悔しい思いをした。だからこそ、VJEPで築けたベトナム人学生との国境を越えた友情と信頼、そして同じ日本にいると雖も普段はあまり会うことのない日本人メンバーたちとのかけがえのないつながりは私にとって格別で、これからも決して絶やしたくない。これほど中身の詰まった二週間は私の生涯の特別な宝物となる。
最後になりますが、VJEP2024の企画・運営に携わっていただいた関先生、オーガナイザーの皆様、ともにプログラムを走り抜けた13人の参加者のみんな、このプログラムに参加する上で様々な面で支えてくれた家族には感謝の気持ちでいっぱいです。この夏ベトナムで得られた経験と学びをここで終わらせるのではなく、自分なりに分析して今後の人生の糧にしていけるよう頑張ります(きれい事ではなく)。今まで本当にありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします。
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