2024年11月1日金曜日

VJEP2024 報告書 「2週間で得た探求心」山﨑柚葉 (獨協大学外国語学部交流文化学科1年) 

 2週間で得た探求心

獨協大学外国語学部交流文化学科1年 山﨑柚葉

 

 「ベトナムで何したの?」帰国後掛けられたこの言葉に、何も答えられない自分がいた。ベトナムメンバーとの交流、様々な学校への訪問、集大成としてのMUNなどやったことを言い並べることは出来るが、このプログラムで得たものは何か、これから時間をかけて考えていく必要があるだろう。しかし、この経験がとても濃く貴重なものであったことは確かだ。そんな私の2週間を、少しずつ振り返っていきたい。

 出発前日、私は何度も「行きたくない」と口にしていた。というのも、これまで海外に行ったことがなく、気候や食事、生活習慣などに大きな不安を抱いていた。その上、テーマに関する知識や英語力が圧倒的に足りていないことも自覚していた。なぜこんな私がこの選考を通ったのか、答えが出ることなく始まったこのプログラムでいちばん大きかったものは、異文化交流だったかもしれない。

 Education for Sustainable Development”というテーマがあったものの、ベトナムでベトナムメンバーと共に過ごしたことは特別だったと思う。例えば、国旗が至る所に掲げられていたり、多くのバイクが通っている道を渡ったり、外で食事をしていたりと、街を歩くだけでも様々な驚きがあった。また、互いの文化を、日常や伝統的なものから少しアカデミックなところまで話す中で、私自身が日本についてあまり知らないことにも気付かされた。ベトナムメンバーからは私が1つ質問すると何倍にもなって答えが返ってくるが、私は「なんで?」と聞かれても答えられないことが多々あった。さらに、宗教やジェンダー問題など慎重に扱うべきトピックについても、「シリアスじゃないよ、普通だよ」と言ってたくさん教えてくれた。ベトナムメンバーは学ぶことに対しての喜びが大きく、それは見習うべき点だろう。「一生新しいことを学び続けると思う」と言ったベトナムメンバーもいて、ある特定の分野に縛られず学び続けることは素晴らしいと感じた。

ビンズオン省へ移り学校への訪問をする中で、教育格差の現状を目の当たりにした。特にボランティアクラスへの訪問は、テーマについて考える上でとても大きな役割を果たすと思う。日本メンバーでの振り返りで、インターナショナルスクールの小学校ではほとんどの生徒が元気よく積極的に発言していたが、ボランティアクラスでは言語の壁があるものの、控えめな子が多かったというものが挙がった。教育環境の差が、知識量だけでなく態度にも表れていると考えられる。このような格差をなくすためには、持続的に教育の場を提供しなければならない。質の高い教育、適切な学習環境、学生への支援制度などを確保し続けることで、教育を受けられない子供が減っていくのではないだろうか。しかし、私たちがビンズオン省で行ったのは、たった1ヶ所に対してのたった1度きりの支援だ。アクティビティ後、鉛筆などをクラスに寄付した。もちろんそのクラスにとって貴重な資源で、役に立つことは間違いないが、これが持続可能な解決をもたらすわけではない。では、そもそも“Education for Sustainable Development”とは何だろうか。持続可能な開発を達成するための教育。子どもたちに深く考えさせ、問題を解決させ、物事のつながりを理解させ、何が正しくて何が間違っているのかを考えさせることで、持続可能性に関する考えを教育に取り入れるのだ。子どもの時から持続可能性に関する考えを学ぶことで、成長してから解決に向けて動くことができたり、次世代の子どもたちに受け継ぐことができたりと、持続可能な開発を達成できるだろう。例えば、ビンズオン省で私たちが訪問した高校では、SDGsのウォールペーパーを作成した。特に3枚目には、1つのゴールをイメージして自由にイラストを描いたことで、そのゴールについて深く調べ、考えることができただろう。このように身につけた知識は、その後の社会問題に対する関心にもつながり、持続可能な開発の達成に近づく。しかし、私たちが小学校やボランティアクラスで行った活動は、文化的な供給に留まるものだった。折り紙を中心とした日本文化をテーマに授業を行ったが、持続可能な開発に関する知識の提供はできていない。では、なぜ私たちは小学校やボランティアクラスに訪問したのか。私たちが授業を行った意義は何だったのだろうか。私は、子どもたちにただ喜びをもたらしたかったのだと思う。小学生にとって日本人(外国人)との交流は滅多にない経験である。幼いころに非日常体験を通して楽しさを感じることも大切だろう。また、このような国際交流の経験が国際社会への関心につながり、長期的に見たら持続可能なのかもしれない。少なくとも小学生にとって、そして私たちVJEP参加者にとっては、貴重な経験となった。

このプログラムは、“Education for Sustainable Development”というテーマで行われたが、結局未だ答えは出ていない。ただベトナムへ行って終わりではなく、これからもずっと考えるであろう、考えるべき問だ。この2週間で何をしたのか聞かれても、簡単には答えられない。それでも2週間の渡航を終えて、自信を持って言えることが1つある。「行って良かった。」



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