2021年9月18日土曜日

バングラデシュー日本国際交流プロジェクト(2021年8月開催)報告書(7)佐藤由佳子(お茶の水女子大学1年)Reflection on the BJEP 2021 (Bangladesh-Japan Exchange Project)(7) Yukako Sato (1st-year, Ochanomizu University)  

  「久しぶり!今AAEEっていう団体でバングラデッシュとのオンラインプログラムを作っているのだけど、興味ある?」

 期待を胸いっぱいに入学した4月から、肩透かしを味わったような4か月を送り、エネルギーをぶつける所がないまま、インターネットを徘徊するだけになった私に友人から送られてきた一つのラインが、このプログラムに参加するきっかけだった。「英語を話せる機会になるから」「時間があるから」「単純に面白そう」という理由だけで参加してしまったのだが、蓋を開けてみれば、ここに書ききれないほど沢山の学びと発見があり、思ってもいなかった激動の展開ばかりの六日間だった。そして、とても個人的な話になってしまうのだが、私にとっては、ただの国際交流、文化交流ではなく、人生の一つの転機になったプログラムであった。

 今回のプログラムのテーマはDeep Culture。プログラムを始めた当初はDeep Cultureの意味もよく分からないまま始めてしまったのだが、バングラデッシュの参加者と社会問題や両国の文化的側面をディスカッションしつつ、自己の価値観や内面について考察を深めていくに連れ、少しずつDeep Cultureの意味を掴むことができたような気がする。

社会の常識と言われているもの。なにが正しいとされているか。それと自分の価値観やアイデンティティの関係性。他の参加者と個人的な話を共有する中で、自分でも驚くぐらいぽろぽろと話が出てきて、いままで振り返ったこともなかった自分の価値観や内面を見つめなす事ができた。しかし、それと同時に、自分がどれだけ凝り固まった理屈の中で生きていたかを、認識されられた瞬間でもあった。改めて、他者の価値観、ものの見方に触れる事の重要性を実感した。

 高校生時代、コロナの流行と共に突如打ち切りになってしまった国際交流プログラム。連日ニュースで報道されるワクチン供給についての各国の軋轢。私はコロナ期間中、自国中心に回っていく社会をぼーっと見つめながら、国際交流をすることに意味を見出せなくなっていた。

 しかし、国際交流、異文化や他者という鏡の見立てを通じて、自文化そして自己を客観視する事ができる。異文化や他者理解を通じて、自己理解へ繋がっていくことに気が付いた。

正直、プログラム中辛かった所もあった。自分の語学力や語彙力や理解力が足りず、上手くコミュニケーションが取れず、苦労もあったのだが、個人的な体験や自分の内面をさらけ出し、言語化する作業が精神的にしんどかった所もあった。

 しかし、実際に言語化することによって、自分の内面を客観視することができたと思う。そして、これから自分がどうしなければいけないのか、不安だった将来へ、少し道が見えてきたような気がする。

 少し話題は変わってしまうのだが、ディスカッションの中で、とある参加者と貧困と障がいと社会の関係について話す機会があった。バングラデッシュでは、貧困で苦しむ人へのサポートはある。イスラム教の五行の中で喜捨があったり、貧困で苦しむ人を支援する団体が多くあったり、貧困層を社会全体で支援する風潮がある事を伝えてくれた。しかし、自閉症やアスペルガー症候群、ダウン症などの障がい、そして身体障がいを抱える人たちは、地域や家族から、冷たい目で見られる事が多いと。公共の場でも、設備はあまり整っておらず、本人や家族には大きな負担が掛かる事を教えてくれた。


 当事者から見たら、不充分な所は沢山あると思うが、他の国と比べると、確かに日本は障がいを抱える方への支援体制は整っている方なのかな...と思った。ほとんどの公共施設では、エレベーターやスロープが設置されており、多目的トイレはほとんどの施設で見ることができる。障がい者の雇用義務なども法律で定められており、支援活動はメディアや教育の中で大きく取り上げられる。支援は別として、社会の目は、さほど変わらないのかな、と思ったのだが....。

一方で、貧困に対してはどうだろうか?

 確かに、生活保護など法律で支援する体制はあるものの、それらを受け取る人に対しての社会の目は冷たい。支援団体は存在するが、学校やメディアなどで貧困は積極的にはテーマには上がらず、積極的なサポート体制は設けられていない。「自己責任」という言葉で片付けられてしまい、社会から無視される。それが日本の貧困への対応の仕方だと思う。

なぜ、貧困と障害に対しての受け取り方が日本とバングラデッシュでこんなにも異なるのか。そこの現状から見える、Deep Culture とか一体なんなのか。


 今回プログラムを通じて、異なる文化を持つ者同士で、個人的な体験などを共有する事によって、どのように自分の価値観やアイデンティティが作り上げられてきたのかを、見つめ直す事ができた。そして、日本の社会に流されるままに生きてきた私にとって、立ち止まって考えるきっかけを与えてくれた。

 Deep Cultureを個人の視点から見る事ができたが、では、Deep Cultureが社会にどのような影響を与えているのか、Deep Culture から生まれる問題点とはなんなのか、どうしたらその問題点を改善する事ができるのか、社会への繋がりまで、バングラデッシュの参加者と今後もっと共有できたらな、と思う。


 社会の事、深層文化の事、自分自身の事など、こんなに沢山のトピックについてたった1週間の中で学べる事ができた経験は初めてだった。また、プログラムを通じて、本当に沢山の素敵な方々と出会う事ができた。プログラム素敵なプログラムを開催してくださった関先生、organizerのみなさん、参加者のみなさん、本当に感謝の気持ちしかありません。こんな素敵なプログラムに参加する事ができて良かったです。ありがとうございました。




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