2021年4月1日木曜日

2021年春休み 多文化共生学習会報告書(3)本間さや香(上智大学総合人間科学部社会福祉学科1年)

 「多文化共生と自己愛」


はじめに


 高校生の頃から大学の長期休暇は夢だった。まさに人生の夏休み。自分がやりたいことをして、大学で仲良くなった友人と旅行に行き、新たな自分を探す。しかしこのコロナ禍で私の理想は未来に預けることになった。そんな中迎えた大学1年生の春休み。この巣ごもり生活、なんとしてでも無駄にしたくない。そう考えていた矢先に巡り会えたのがこの勉強会だった。AAEEに所属する親しい友人からこの勉強会について紹介され、参加を決意した。正直参加するか悩んだが、今振り返るとあの時の決断は本当に正しかった。それ程この勉強会は学びが多く、素直にとても楽しかった。7日間という短い期間ではあったが、参加者の皆さんと活発に議論を繰り広げ、「内から外」「外から内」を見つめることで、確実に自分の中に成長という2文字が現れた気がする。


オンライン開催について


 私はオフラインよりもオンライン形式の方が苦手で、Zoomでパソコン越しに発言することに多少抵抗があった。しかしAAEEのスタッフの皆さんが場を盛り上げ、アイスブレイクを通して場を和ませて下さったおかげで緊張がほぐれ、リラックスして受講することができた。また、参加者の定員を20名と少人数に限定することで、一人一人が埋もれることなく参加することができた。そして、大人数でディスカッションするのではなく、参加者20名を約3名ごとのチームに分散しブレイクアウトルームで話し合う形式だった。そのため全員が積極的に自分の意見を述べることができ、少人数で深い次元まで話し合うことができた。各チームには約2名のAAEEスタッフが配置され進行して下さったため、ディスカッションを円滑に進めることができた。

 オンラインのメリットとしては、学生が全国各地から参加できることだろう。私は実家に帰省していたがオンライン開催だったため気軽に参加することができた。普段は交流する機会のない関西地方や中部地方の学生とディスカッションを重ねることができ、非常に刺激的な経験になった。一方でデメリットとしては、参加者の皆さんと深い仲を築くことが難しいということだ。SNSが普及しているおかげでLINEやInstagramを通して参加者の皆さんと繋がることはできたが、やはり実際に会って様々な話をする中で相手のことを更に知ることができたらと強く思った。しかしオフラインとなると全国各地からの参加が困難になるため、このコロナ禍においてはオンライン開催が賢明な判断だったと考える。オンライン開催という異例な状況下にも関わらず、オフラインと何ら臨場感の差や受け取る学びの差を感じさせない工夫をして下さったAAEEスタッフさんには心から感謝を伝えたい。


多文化共生について


 私は高校2年の時にアメリカへ1年間留学し、多文化共生に関する知識や理解は一定数備わっていると勝手に思い込んでいた。しかし勉強会に参加したことで、如何に私が外の世界に無知で、如何に私が見ている世界が狭いか気づかされた。Day1からDay7で登壇されたゲストの方々は、皆私の知らない世界を見ていた。私の知らない視点や価値観を身につけていた。全ゲストの対談の感想や気づきを述べたいところだが、そうなると確実に字数を超過してしまうため特に感じたことの多かったDay6についての感想と私の考えを述べたい。

 Day6では多様な幸せの価値観や多角的なものの見方について学び、参加者の皆さんと深い議論を交わした。後発途上国と言われるネパールでは貧困に苦しみ、今日行うことや将来への選択肢が限られている人々が多く存在する。しかしネパールは、物質的幸福度は低いが精神的幸福度は高く、故郷への愛が強いのだ。彼らは自分を取り巻く環境や現状に満足し、心から幸福を感じているのだ。一方で日本は豊かな国であるが故に日常が選択肢で溢れ、可能性も無限に広がっている。よって現状に満足しづらく精神的幸福度が低い。選択肢が少ないネパール人は現状を受け入れ幸せになり、選択肢の多い日本人は常に何かに悩み周囲と比較し劣等感を感じている。私は多文化共生を学ぶことで多様な幸せの価値観の存在に気づき、それが自己愛にも通じる部分があると感じた。

 私はこの勉強会を通して他国には様々な文化や民族が存在し、世界中の人々一人一人に多様な幸せの価値観があると知った。そして自分の物差しや思い込みだけで世界を眺めるのではなく、自分が知らない世界や価値観や景色が存在することに気づき、その世界を否定するのではなく受容する。そしてその都度自分の価値観をアップデートすることが大切だと気づくことができた。多文化共生を理解することで「この世界は多種多様な人々や価値観で溢れているから、私は他者に合わせなくていい、他者とは異なる存在でいい。」と思えるのだ。そして自分自身が多文化社会の構成員の一人だと自覚することで、他者と比較して劣等感に苛まれることがなくなり、幸福度が高まるのではないかと考える。日本は同調圧力が強いが故に周囲に合わせてしまい、「みんなと同じ箱」から飛び出ることへの恐怖心を抱いている人が多いだろう。だからこそ多文化共生の視点が必要で、他者と違う自分、自分と違う他者を受容し、互いの「相違点」を尊重し合う必要があるのだろう。このように多文化共生を理解することは、単に多文化を知ることだけではなく、皆で互いを受容し自己愛と他者への愛を深め、皆で幸せになるための手段になると考える。

 私はここから学んだことをコロナ禍での生活に活かしていきたいと考える。コロナの影響で人々の生活に自粛と制限が付き纏い、幸福度が下がり孤独も感じやすくなった。海外への旅行も困難になり「内から外」に行くことが難しくなった。そんな時だからこそ視野を広げ、本や新聞、インターネット等を活用して多文化に触れ、この世界の広大さと多様さ、そして自分がその中の一員であることの素晴らしさを常に感じていたい。一歩外へ踏み出せば無限に広がる自分が知らない世界を想像し続けたい。そして今はその世界をいつか体験するための準備期間だと思い、コロナ禍で外に行けないからこそ自分の内と向き合い、まずは自分を愛し、受容し、多文化を受け入れる準備を整えておきたい。


最後に


 私はこの勉強会を通して新たな視点と深い学びを得ることができた。そしてそれと同時に自分の知識不足と経験不足を痛感した。残された大学3年間、少しでも多くの経験を積み、思慮を巡らせ、自分の世界を何度も何度もアップデートしたい。そしてまたいつかこの勉強会のような素敵なイベントに巡り会えると信じて未来に期待を寄せたい。

最後に、私たち学生を誰よりも応援してくださるAAEEの代表理事である関先生、この勉強会を企画し運営して下さったAAEEスタッフの皆さん、そしてこの勉強会に参加して私に多くの気づきを与えて下さった参加者の皆さんに心からの感謝を送りたい。この勉強会での様々な出会いを大切に、残りの学生生活を有意義なものにしたいと強く思う。



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