2021年4月1日木曜日

2021年春休み 多文化共生学習会報告書(5)平松佳野(関西学院大学国際学部1年)

 春休み 多文化共生勉強会 参加報告書

関西学院大学国際学部1年 平松佳野


 コロナ禍で始まった大学生活は理想とは程遠く、無理やり自分で自分を納得させるようにして一年生を終えてしまった。そして何も新しいことを始められないまま春休みを迎え、このプログラムに出会った。また何もせずに過ごすくらいなら、何か一つくらいこの春休みに行動したい。こうして何気なく参加を決めた今回のプログラムで、これほど大きなものを得ることができるとは思ってもみなかった。ここでは、今回のオンラインプログラムに参加した、私の率直な思いを記していきたい。

 今回私が参加したプログラムの内容を大まかに説明すると以下のようなものだ。これからの多文化共生社会の実現のため、様々なバックグラウンド持った人たちの対談を聞き、参加者同士でディスカッションをして、日本の現状と課題について理解を深めるというものである。私にとってAAEEが主催するプログラムへの参加は今回が初めてであり、手探り状態でプログラム1日目が始まった。それぞれの自己紹介やアイスブレイクなどが行われ、プログラムは進行していった。この時点で私は、「大変なところに来てしまった」と硬直していた。オンラインで顔を合わせた人たちは、私にとってはあまりにも優秀な人たちだったからである。しかしこれこそが、オンラインの醍醐味なのである。ミーティングルームに入るまで、そこにどのような人たちとの出会いが待っているのかは分からない。これまでとは全く異なる環境に身を置くということは、多様な価値観の存在に気づき、考えを深める機会を与えてくれる。対面であればおそらく会うことができなかった他大学の学生や、ゲストスピーカーの方々との出会いは、私にとって本当に大きな刺激となった。積極的な参加者の人たちにつられて、私自身もとても真剣に取り組み、実りのある時間を過ごすことができた。

 そこで受けた刺激は、実際に私の心境の変化にも現れている。正直なところ、これまでの私は、国際学部という学部に所属しながら、国際的な活動に参加するなどの積極的な行動をあまり起こす方ではなかった。高校2年生の頃に学校主催のミャンマーへ行くプログラムに参加したことがあるが、友人の誘いがきっかけであり、誘われていなければ見向きもしていなかった。最初に記したように、今回のプログラムへの参加のきっかけもあまり積極的なものであるとは言えない。しかし現在、なんと私は一つのオンラインプログラムを主催しようとしている。きっかけは、このプログラムの最終日、最後のzoomでの関先生との会話である。話題はミャンマーでのクーデターの話になった。ミャンマーに行ったことがあり、現地に友人を持つ私は、ニュースやSNSを見ながら自分では何もできない現状に無力感を感じていた。そしてそれを関先生に話すと、プログラムの主催を持ちかけられたのである。私は一瞬、何が起きているのか理解できなかった。一参加者の私に、そんな話が持ちかけられることがあるのかと衝撃を受けたのだ。そして私は思わず、やりますと言ってしまった。半ば勢いで言ってしまったが、プログラムで出会った人たちの生き方や考えから受けた刺激が、私にこの決断をさせたのだろう。こうして始まったミャンマーに関するオンラインイベントは、現在まだ進行中であるが、確実に私を成長させる経験となるに違いない。

 「多文化とは、何も異国同士の間で考えられるだけのものではなく、国内においても人々のアイデンティティは多様なものであり、多文化は身近に存在する。」これが、今回プログラムで築いた私の新しい価値観である。今までも他人との考え方の違いを自分なりに受け止めていたつもりだったが、まだまだ知らないことがたくさんあり、無意識のうちに考え方が凝り固まっているところもあったのだと、雪解けのような感覚を覚えた。特に印象的だったのは、偏見や差別に関するディスカッションである。このトピックは7日間の中でも何度か話されたが、集団意識の高い日本社会において、無視できないものではないだろうか。また、多文化共生を実現する上で、解決しなければならない非常に大きな課題である。例えば、昨年大きく取り上げられたBlack Lives Matterや、ジェンダーの問題などである。これらに関して、平等な価値観が正しいという教育を受けてきた多くの若い世代は、差別をする人たちの考えをあまり理解できないかもしれない。しかし、差別をしている人たちにとっては、差別をしない人の考えの方が理解し難いのではないだろうか。その人がそれまで生きてきた環境や、受けた教育、周囲の人々との関わりなど、様々な要因によって人間の価値観は構成される。異なる価値観に出会ったとき、それをはじめから拒絶し批判するだけでは、多文化共生は実現できない。なぜその人がそのような考えを持つのか、互いに自己開示をし、歩み寄ることが唯一の糸口であると私は考えた。

 他にもここには書き切れないくらい多くの気づきをプログラムで得ることができた。さらに、参加しなければ繋がることができなかった人たちとの出会いも含めて、このプログラムへの参加は私にとって大きな意味を持つものとなった。大学生活1年目はどこか閉塞的だったが、これをきっかけにやりたいことにたくさん挑戦していきたい。7日間で気づいた学びも、これからどんどんアップデートしていく。多くの学びと素敵な出会いをくれた今回のプログラム、機会を下さった関先生と学生アシスタントの方々、参加者の皆さんに心から感謝している。



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