2021年4月1日木曜日

2021年春休み 多文化共生学習会報告書(2)山本 零士(豊田工業大学1年)

 選択肢の多さは幸せにつながるのか

山本 零士


参加しようと思った理由

一年間、完全オンライン授業で人と接する機会が減り、新たな価値観を得られる機会が少なくなっていた。そこで、オンラインでも意見交換はできるのではないかと思ってオンラインのイベントを探していた。

 そんな中でAAEEのアシスタントメンバーから多文化共生勉強会を開催するという話を聞き、なかなか接することがない話題について詳しく話を聞くことを期待して勉強会に参加した。


選択肢の数と幸福感の相関関係

望月千里さんと山岡大地さんをゲストに招いた「多様な幸せの価値観:ネパールの山頂からしか見えない景色」では、ゲストの方々がネパールにいる人は選択肢が少ないけれど、幸せに感じていると話しており、参加者との間で選択肢が多いと幸せになるのかという議論をすることになった。私はたくさんの選択肢の中から条件をじっくりと比較して、少しでも良いと思える選択をしたいという性格だった。そのため、数え切れないほどの選択肢の数でない限り、選択肢が多ければ多いほどいいという考えを持っていた。では、なぜ関さんが出会ったネパール人は選択肢が少ないのにもかかわらず幸せに感じていたのだろうか。参加者との議論や、ゲストの話を通して考えてみた。

幸せに感じない理由として一つ目に挙げられるのは、選択肢が少ないと選ぶときに負担を感じにくいという点である。これはある週に6種類、別の週に24種類のジャムを試食販売するという、コロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授によって行われた実験によっても明らかになっている。このとき、6種類の週は30%の人がジャムを購入したが、24種類の週は選択するのが難しくなってしまい、3%の人しか購入しなかった。

また、服を選ぶときに候補が5個程度であればすべて試着して購入する服を決めることができる。興味のある服が何十個も並んでいると、どれを選ぶか決めるのに相当な労力をかけないといけない。それならば、すべての服から選ばずに5個くらいを適当に選んで、その中から購入する服を選べばいいと思った人もいるかもしれない。ところが、「見ていなかった服の中に自分にぴったりの服があったらどうしよう。」だったり、「5個から服を選んで後悔したくない。」という気持ちがあるため、すべての服を見たくなってしまうのだ。

二つ目の理由として、比較対象が増えるためどの選択をしても一部の条件で選んだ選択よりも上回っている選択肢があるため、自分の選択に満足できないことがある。加えて、選択肢が多いときはこれだけの選択肢の中から選んだという理由から、選択に対する期待値が高まってしまう。その結果、思ったより満足できなかったということが増えてしまうのだ。

 それでは、どうすれば選択肢が多い日本において幸せに生きていくことができるだろうか。それはネパールやバングラデシュで社会福祉事業に携わってきた関愛生さんの「やらなかったらいつか後悔するのではないかと考えて行動するようにしている。」という言葉が答えであった。日本では、良い(偏差値が高い)中学・高校に入り、良い大学に入る選択肢を増やし、良い大学に入って良い(年収が高い・知名度がある)会社に就職する選択肢を増やすことが幸せな人生だと考える人も多い。別の日のゲストの佐藤さんが勤務していた都内の中学校の生徒が学力は高いけれど、受験に失敗したため自信がない子供が多いとおっしゃっていたが、その原因も良い学校に入って選択肢を増やすことが幸せな人生であるという周囲の人の考えであるだろう。

ところが、良い学校に入るだけなのは受験勉強だけを続けて選択肢を増やすだけで、目の前の決断を後回しにしているだけではないのだろうか。そのせいで、日本の大学生には入学するまでは努力していたが、入学後は目標を見失ってしまう人が多い。

もちろん、お金を稼いだり勉強を頑張ったりして選択肢を増やすことも大事ではあるが、選択肢を増やして将来に期待するだけではなく、関さんのように目の前の生きがいのために全力を尽くしていくことが、日本で幸せに生きていくために重要なことである。そうしていくことで、自分にとっての幸せにつながる選択が見えてくるだろう。


最後に

私は今回の多文化共生勉強会を通して、幸せとは何かについて自分なりに考えることができた。さらに、参加者が各自の幸せの価値観を積極的に語ったり、ゲストの方々が海外で体感した外国人の幸せの価値観を丁寧に説明していたりしたおかげで人によってこんなに幸せに感じる瞬間が違うというのを知ることができた。そして、関先生が東京五輪の陰では低賃金で働いている外国人が多くいるとおっしゃっていたように、自分の幸せも多くの人の努力から成り立っている。これからは私が、選択肢がない人たちを幸せにしていけるように努力していかないといけないと強く感じた。

 

 この度はこのような機会を与えてくださったゲストスピーカー、AAEEアシスタントメンバー、関先生にお礼を申し上げます。そして、参加者の方々も積極的に意見を主張してくださり、ありがとうございました。



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