「私にできること」
東京家政大学こども学部1年
北原 咲希
写真を見返すたび、心の奥がぎゅーっと締め付けられる。キラキラ笑顔の子どもたち、エネルギーに満ちた仲間たち、生を感じさせてくれた美しく荘厳な自然、クラクションの鳴り響く道路、目を背けたかったあの光景…。ネパールでは、当たり前に続いている日常であるのに、一つひとつが“思いで”に変わってしまうことが怖くてたまらない。
「私にできることってなんだろう」ネパールでも常日頃考え続けていたことだ。目の前にある、変えていかなければならない現実と、変わってほしくない現実とが入り混じり、結局、私は無力であり、自分にできることはないのかも知れない…。そんな結論に至ってしまっていた。
そんな私を変えてくれたのが、村の子どもたちである。このツアーで唯一胸を張っていえるのが、誰よりも子どもたちと思いっきり遊んだということだ。この村の子どもたちの為に、自分だったら何ができるか。そんな苦しい問いと無力感から逃れ、全てを忘れたくて無我夢中で遊んだ。シャイな彼らが一瞬見せる笑顔と、賢そうな眉をクイッとあげて私を見つめる瞳がまた愛おしくて、時間と我を忘れ、一緒になりはしゃいだ。
子どもたちの無邪気な笑顔を見つめているうちに、ふと気づいた。これでいいのかも知れないと。私は、「自分にできること」を支援という枠組みの中で、形式的な型にはめ込もうとしていた。正解なんてないのだとわかっているつもりであったが、無意識のうちに求めてしまっていた。答えがないことは、確かに辛いことだ。しかし、目の前の子どもを笑顔にできなくて、何の支援ができるのだろうと考えると、これこそが今の自分にとっての最高の支援の仕方であって、それが始まりなのだと思う。言語の違う子どもたちとどのようにコミュニケーションをとったらよいか悩んでいたが、一緒に同じ目線になって遊ぶことが、こんなにも言語の壁を越え、心の距離を縮め、お互い笑顔になれる魔法なのだということをも、彼らが教えてくれた。素敵な笑顔と、大切なことを教えてくれた子どもたちに、心から感謝したい。
また、私はこのツアーで、幸運にもネパールのCBRO(Community Based Rehabilitation
Organization)の施設を特別に見学させて頂ける機会を頂く事ができた。障がいをもつ子どもたちの通うDay
care centerである。
私は、大学で特別支援教育を学んでおり、途上国の障がい児教育に大変興味がある。しかし、途上国の障がい児支援を本やインターネットで探してみても、あまり情報はなく、どういう支援を行っているのかというよりは、障がい児・者の状況や、問題点が多く語られていた。なので支援団体や施設があっても実際にどのような人が関わり、支援や教育をしているのか全くわからなかった。
今回施設に実際にお邪魔し、一番感じたことは、とにかく先生方があたたかい、ということだ。途上国の障がいを抱えている人に対しての周りの目線は、ひどいものである。そんな思い込みが脳裏に張り付いていたが、CBROの先生方は、一人ひとりの能力を把握し子どものしたい、やりたい、という主体性を尊重し、向き合っているように思えた。
もちろん、全ての人が同じ考えではないし、支援の仕方や環境に問題点や改善点も見られたが、それ以上に、障がいをもつ子どもにかかわる人々のあたたかさを感じられたことが、実際にお邪魔させて頂けたからこそ感じられたことであると思う。これまで、脳裏にあったネパールのマイナスイメージが完全になくなり、希望に変わった。私が見たのは彼らの生活のほんの一部であるが、もっともっと関わり彼らの未来を一緒につくりたいと本気で思った。
最後に、これらの経験は、ただただ、「行きたい!」「分からないので、全て感じて見てきたい!」という私の思いに、関先生を始め、青年海外協力隊の隊員さんや元隊員の方、ネパールで実際に活動されていた方…多くの人がたくさんのアドバイスやサポートをして下さり、実現できたことである。初めての地で、不安なく充実した時間をすごせ、私のこれからの人生に、大きくつながるような学びを得られたことは、多くの方々の協力があってこそ経験できたことで、決して自分ひとりでは得られなかった。だからこそ、支えてくださった方々の思いを無駄にはしたくない。これらの学びを“思いで”にするのではなく「今、自分にできること」「これから自分がしていきたいこと」を常に考え行動し、繋げていけるように、これからも学びを深めていこう。
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