2016年11月7日月曜日

ネパール NJEP 2016 報告書 (5) 中村渚(上智大学総合グローバル学部2年) ~ネパールという地で~

          ~ネパールという地で~


上智大学総合グローバル学部
総合グローバル学科2年
中村渚


"Dhanyabaad."
「ありがとう」を意味するこのネパール語は、今でも私の口から無意識のうちに出てしまう。それくらい強烈な印象を与えた約2週間のスタディーツアーを通して、自分が何を学び、考え、感じたのかということを、正確かつ自分の言葉で人に伝えることがいかに難しいことかをひしひしと感じる日々を過ごした。今回のツアーのテーマは学生交流。ネパールと日本の学生が10日間共に過ごす中で、異文化理解や同世代の横のつながりを大切にしていくことが最終目標であった。私にとっては初めてのアジア。海に囲まれた島国の日本とは異なり、山に囲まれた内陸の国ネパールで、自分の目で見たこと、自分の鼻で嗅いだもの、自分の口で味わったもの、自分の耳で聞いたこと、自分の手で触ったもの、その全てがネパールでどれもが私にとって初めての連続だった。「人間が人間らしくいられる場所」と言うには大げさにしても、私にとってはまさに非日常の日々であったことは事実である。このレポートではそのいくつかを紹介したい。
まず、なんといってもネパールの街。これは、どの街に行ってもそれぞれ異なる魅力に溢れていた。ネパール到着直後に滞在した首都のカトマンズは、日本にいては体験することがないであろうほどの吹き荒れる砂ぼこりと、脳裏にこびりつくくらいの鳴り響くクラクションの音に包まれた街だった。建物同士も近く、まさに「ごちゃごちゃ」という言葉がぴったりな場所だった。一方で、ネパールでも特にオリジナルなライフスタイルが人々の生活に今なお息づいているマイダン村では、日の出とともに活動し日の沈みとともに休まるという生活を送っていた。村の長老たちのおしゃべりや家畜の鶏の鳴き声で目覚め、外に出ると、寝起きの体をキーンと包み込む朝のさわやかな風と太陽の光に包まれるだけで心が豊かになっていくのを感じた。そして街全体をゆっくりと時間が流れているポカラでは、映画のセットのようなハイカラな雰囲気を醸し出している店や雄大なヒマラヤ山脈を一望できるスタンドなど、個人的に最も好きな街だった。目の前に広がるヒマラヤ山脈を一望しながらのサンライズは、まさに格別だった。島国に生まれ、海から名前の由来を受け継ぎ、両親の影響でマリンスポーツばかりやっている私にとって、普段から山に行く機会が少なかったため今まで山に対しての興味がさほど湧いていなかったが、今回生まれて初めて雄大なヒマラヤ山脈を目の前にして、なにか話しかけたくなるような、自分が心から相談したくなる兄のような存在に思えた。毎回海に行ったときは波の音を聞いて心を落ち着けて物事の整理をしているが、山に対して前述のような気持ちに自然となれたことには自分でも驚きだった。

日本では忙しさに駆られて過ごす日々。自分が思う「素の生活」をこのツアーの中で過ごせていた。個性的な雰囲気を持つ街、と普段では気づくことができないかもしれない自然への感情を発見できたネパールという場所は、そこに行くたびに自分に何かを問いかける、もしくはヒントを見つけられる場所となるかもしれない。目に見えない小さな幸せを、心から喜び愛おしいと思える日々を過ごせた今回のスタディーツアー。きっとここでの経験はこれからの私の生活の中で、ふとその時の自分に何かしらのサインとなるものになるであろう。そう気づいた瞬間が、今回得た学びが活かされたことを意味するのかもしれない。

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