2018年10月7日日曜日

ベトナム VJEP 2018 報告書 (9)木間香苗 (筑波大学 社会・国際学群 国際総合学類3年)

「VJEP2018を振り返って 学んだこと」

筑波大学 社会・国際学群 国際総合学類3年
木間香苗

 
ホストマザーと彼女の英語教室に通う子どもたちと
   私にとって2週間海外に滞在することは初めての経験でした。また英語でのコミュニケーションに自信がない私にとって英語でベトナム人学生と寝食を共にし、“Poverty and Education”という特定課題に向き合うという2週間はまさにチャレンジでありました。私がこのプログラムへの参加を決めた理由はこのチャレンジを自分に課したかったためです。VJEP2018が学生交流のみを目標としたプログラムであったり、1日のうち限られた時間のみしか現地の学生と交流できないプログラムであったりしたら私は参加しなかったでしょう。プログラムは大成功に終わり、私自身も自分に課したチャレンジに精一杯取り組めたと感じており、夏期休暇をVJEPに捧げることができてよかったと思っています。

 振り返るとハードかつ充実した毎日でした。毎朝6時台に起き、身支度をし、午前中のプログラム会場に行きました。2週間のうち始めと終わりの5日間はホーチミンに、中盤の5日間はホーチミンからバスで3時間ほどのところに位置するビンフック省に滞在しました。ホーチミンでの移動にはほとんど「Grab」という配車サービスアプリで手配したタクシーを使いました。通常のタクシーより割安なのだとベトナム人学生に教えてもらいました。6人ほどで乗る車の中では車窓から見える観光スポットを教えてもらったり、ラジオから流れる日本の歌について話したり、自撮りアプリで遊んだり、ベトナム語や日本語を教え合ったりとさまざまなことをして過ごしました。プログラムが進むにつれ“Poverty and Education”についての調査やプレゼンの話をしつつも、仮眠をとることが増えてきました。私はこのホーチミン最初の疲労ピークを迎えていて、体調も気分も優れませんでした。そのためいつものように明るく振る舞えない場面があり、他の参加者に心配をかけて申し訳ないと感じると共に皆の優しさに感謝しました。
 5日間ホーチミンに滞在した後はビンフック省に移動しました。たくさんの大きなキャリーバッグと共に人数の割に小さすぎるバスに詰め込まれて数時間揺られたことは忘れられません。
 ビンフックで滞在した5日間はかけがえのない時間だったと感じています。人との出会いを楽しみ、貴重な経験をたくさんしました。今回のプログラムのコア部分でもある少数民族が暮らす集落でのインタビュー調査や、小学校でのオリジナル授業を行いました。 
   現地家庭にベトナム人学生とペアでホームステイすることは私が最も楽しみにしていて、一方で不安にも思っていたことのひとつでした。しかし、私の不安はすぐにどこかに吹き飛んでしまいました。ホストマザーは覚えたてのベトナム語でたどたどしく挨拶した私を笑顔で出迎えてくれました。彼女は学校と自宅で英語教師をしているため、幸いにも英語でコミュニケーションを取ることができました。彼女は私たちと会うことをとても楽しみにしていてくれたようです。クローゼットから次々とアオザイを出しては私に着せ、写真を撮ってくれました。アオザイを着ることに憧れていた私にとって幸せな時間でした。ホストマザーに家の奥にある部屋に行くよう言われて行ってみると、教室になっていました。彼女の英語教室に通う子どもたちが、日本人が来るということで集まってくれたようです。子どもたちに質問攻めにされながら、日本の文化やベトナムについて、それから好きな韓国人アイドルの話で盛り上がりました。
 しかし後悔したことがあります。子どもたちは日本についてたくさんのことを知っていて、私は驚きましたし嬉しく思いました。それなのに私はベトナムの言葉や文化などについて知っているか聞かれてもあまり答えられませんでした。そのことで「あなたの国に興味を持っていない」というメッセージとして子どもたちに伝わってしまったような気がしました。自分で決めてベトナムを訪れたのに、この国を理解しようとする気持ちが欠けていたことに気づかされ、子どもたちに対して申し訳ない気持ちになりました。
 その日はその後、リクエストに応えて浴衣に着替え、写真を撮るなどして楽しい時間を過ごしました。次の日も小学校での活動を終え家に帰ると子どもたちが待っていてくれ、中にはプレゼントを持ってきてくれた子どもたちもいて感激しました。日本の文化をさらに詳しく教える授業をしてほしいというリクエストにより意気込んで話したのですが、後になって少し後悔しました。ただ日本の話をするよりベトナムとの違いを踏まえた上で説明した方が、子どもたちもより心を開いて安心して聞いてくれるしわかりやすかったのではないかと。ホームステイ先での子どもたちとの出会いは、私が日本人であることに誇りを持たせてくれましたし、あたかも芸能人のように人気者気分にさせてくれました。同時に、英語でコミュニケーションは取れても、相手の国についての興味を示すことを欠かすと深い交流に辿り着くのが難しくなることを学ばせてくれました。

   ビンフック省のゲストハウスやホテルに滞在した数日間で、ベトナム人学生との心理的距離が一気に縮まりました。眠くなるまでゲームをしてそれぞれの秘密を暴露したり、表面上の付き合いだけでは知り得ないような本音の部分も打ち明けてくれたりしました。さらに日中の活動についての裏事情を教えてくれたりと話題に事欠かず非常に充実していました。彼らから見ると私たち日本人学生は恥ずかしがり屋に見えたそうで、もっと仲良くなりたいのに思うように話せないと悩んでいるベトナム人学生もいたようでした。それに比べるとベトナム人学生は非常にフレンドリーで自信に満ちていました。そしてプログラム期間中何度も驚かされたのが彼らはエネルギッシュでタフであるということです。とてもかっこよかったです。私たち日本メンバーとの温度差を感じることもありましたが、彼らからたくさんの愛を受け取りましたしたくさんの刺激をもらいました。私がプログラムをここまで楽しむことができたのは彼らがいてこそだと思っています。
 私は英語に自信がなく、日本語でコミュニケーションを取っている普段に比べると口数が少なかったし、“Poverty and Education”について議論している時も自分の考えをうまく伝えられず悔しい思いをしました。だからといって「改めて英語をもっと頑張らないといけないと思いました」という感想で終わりたくありません。このような感想を持つことは行く前からわかっていたからです。それよりも、プログラムで出会ったベトナム人学生やビンフック省の子どもたちや政府の関係者との交流を通じ、相手の国の言葉や文化に興味を持つこと、それを示すことで心を開いてくれるのだということを、身をもって学ぶことができました。これは私にとって大きな収穫だと思います。

 これらの学びは慣れない環境でたくさんの新しいことに一生懸命取り組んだからこそ得られたと思いますし、もがいたからこそ自分の成長を感じることができたのだと思います。多くの期間と労力を費やし、愛と熱意を持ってVJEP2018という学びと成長のフィールドを作ってくださったAAEE代表理事の関昭典先生をはじめ、日本・ベトナム両国の学生オーガナイザーに心から感謝しています。そして多くの時間を共有した両国の学生参加者のみんな、大好きです。このようなすばらしい人たちとVJEP2018の大成功に貢献できたことを誇りに思います。ありがとうございました。
ビンフック省のホテルで夜更けまで語った時

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