2018年10月4日木曜日

ベトナム VJEP 2018 報告書 (3)備瀨美優 (筑波大学 社会・国際学群国際総合学類2年)


「互いを深く理解すること、そこから得るもの見つけるもの」


筑波大学 社会・国際学群国際総合学類2年
備瀨美優
私は2週間のこのプログラムを経て、非常に多くのことを体験し、貴重な経験をさせてもらった。その中でも特に得たことが2つある。
まず1つ目に、大きな達成感を得たことである。その達成感を与えてくれたのはプロジェクトの1つであった「リサーチ」である。512日に初めて日本人の参加メンバーに対面してからいくつものプロジェクトを並行して日本で準備をしてきた。現地で実際にどこまで実現可能かを考え、そのプロジェクトを実施する目的がしっかりと果たせるためにどのような内容にするのかなど、それぞれのプロジェクトをメンバー全員で毎回のミーティングやオンラインでの準備で真剣に行ってきた。その中で、リサーチは、私を含めたメンバー3人が中心となって取りまとめていたプロジェクトであった。
「リサーチ」は、ベトナムの貧困地域において住民にいくつかの質問を行い、そこからその地域がどの程度貧困なのか自らの調査で判断した上で、貧困の度合いと幸福の関係性について考え結論を出すというものだった。日本では、どのような質問なら貧困と幸福を繋げられるような回答を得ることができるか、どのような質問ならインタビューを受ける住民の方が不快な思いをせず答えることができるのか、どのような回答方法が良いか、質問形態はどうするか、現地でのリサーチ以外により回答を得るために他に方法はあるかなど、このプロジェクトを成功させるために非常に多くの可能性や選択肢をメンバーで考えていた。
 このプロジェクトが最も難しかった点は、当日、住民へのインタビューが終わるまでどのような結論に結びつくか全く予想がつかないことである。そのため、日本で最大限に準備をしたつもりでも、プロジェクトが終了するまで安心することができなかった。実際、当日インタビューの対象となる住民の方達を目の前にした時、これまで真剣にメンバー全員で考えてきたインタビュー内容を全く違うものに変えたくなった。それは、自分が抱いていたイメージと対象の方が異なったからだ。外見から想像以上に貧困であることが伝わり、「このような質問をするのは過酷ではないか」「もっと違う質問があるのではないか」など不安だらけになった。最終的には、英語からベトナム語に通訳をしてくれたベトナム学生10人の助けもあり無事これらの質問の回答を得ることはできたが、インタビュー中は緊張と不安でいっぱいだったことを覚えている。
 このリサーチプロジェクトはこの2週間のプログラムの中で私の中で最も気にかかるもので、不安要素なものであった。実施当日、予測不可能なことが起こったり自信を無くしたりもしたが、このプロジェクトの成果に私は100点をつけたい。日本で準備が始まり他のメンバーが中心のプログラムが徐々に形になっていく中、ベトナム側との交渉もつまずいたり具体的なゴールが見えずなかなか進まないリサーチに、自分に責任を感じたり、どのように進めたらうまくいくのか悩んだりすることが多くあった。それでも関先生やアシスタントの大瀬さんに助けていただいて少しでも内容をよくしたり、共にこのプロジェクトの中心で活動した河面さん、山戸さんと諦めずに最後まで取り組んだりした過程に私なりではあるが十分に満足しているからである。もちろん改善点や至らなかった点はある。しかしそれは今回の経験を通してこそ気づけたことであり、このプロジェクトを最後までやり遂げたことで自分に大きな自信を持つことに繋がった。
 得たものの2つ目は、「新たな興味のある分野の発見」である。そもそも私がこのプログラムに参加したのはテーマが貧困と教育という、自分の関心が最もあるものだったからである。しかし2週間を通して新たな関心分野を見つけた。「LGBTと周囲の環境」である。きっかけは自らがゲイであることをオープンにしているベトナムの学生が2名このプログラムに参加していたことである。周りのベトナムの学生もその2人を当たり前のように受け入れており、その信頼関係の上でその内容を絡めたジョークを言ったりしていた。このようにベトナムでLGBTが日本に比べて受け入られていることを肌で感じ、心をオープンにしていることで生き生きと周りに溶け込んでいる2人と共に過ごした2週間を通して、私の中でLGBTの問題について関心が強くなった。ベトナムではどのような背景がこのような社会の環境を作っているのか、同じ東南アジアでも他の国はどのような認識なのか、日本でLGBTの人はどのような息苦しさの中で生活しているのだろうか、などこれまで考えたことのない疑問が浮かびあがってきた。
 このような新たな関心のある分野の発見ができたのもVJEPならではのプログラムの良さがあったからだと感じている。他国での文化や社会的な環境を理解するのに大切なのは、何よりも現地の人と多くのことを話し、互いを深く理解し合うことだと私は考えている。実際このプログラムでの2週間、現地の学生と一日中プロジェクトを行うだけではなく、「おはよう」から「おやすみ」まで、時には同じベッドで仲良く就寝するという生活を続け、これまで海外で経験したことのない友好関係を築くことができた。このような関係が構築できたからこそ、旅行客としてこの国にいるだけでは気づくことのできないベトナムを感じ、得るものも非常に多かったと感じている。
 貴重な出会いと時間を与えてくれたこのプログラムに感謝するとともに、このようなプログラムの運営に関心が湧き、今後AAEEのメンバーとして活動していくことを決意した。より多くの学生にこのようなプログラムに参加してほしいという思い、そして自らをさらに成長させたいという思いを大切に、今後の活動に携わって行きたいと思う。

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