2018年10月4日木曜日

ベトナム VJEP 2018 報告書 (4)田中彩恵 (筑波大学 社会・国際学群国際総合学類4年)

「ベトナムで失った自信と得た教訓」


筑波大学 社会・国際学群 国際総合学類
4年 田中彩恵

 「そうだ、ベトナムに行こう。」
私が今回のVJEP2018に参加しようと考えたきっかけは、就職活動中のこの思い付きであった。毎日都心に赴いては面接を受け、結果に一喜一憂し、自分に価値などあるのだろうか、と自分自身に問いかける日々は精神的にかなりきつい状況であった。そんな時に知ったのが、このVJEPのプログラムである。もともと興味のあった東南アジアに2週間滞在でき、なおかつ現地の学生とともに学ぶことができる。学生時代にしか経験できないことじゃないか!と思い、迷わず申し込んだ。
 プログラムに参加するに際して、私はある点に関して自信を持っていた。1つ目は、英語のレベルである。留学経験もあるため、ベトナム人との英語での会話は余裕でこなせると考えていた。2つ目は、東南アジアでの生活経験である。留学でタイに行っており、タイ人の学生と長く過ごしていたこともあるため、東南アジアでの生活や東南アジア人との交流には慣れているという自信があった。一方で、不安ももちろんあった。「貧困と教育」というテーマに関してである。正直言って、この分野は今までしっかり勉強したことがなかった。ほかの人よりも知識がない状態であることが懸念点であったが、これを機に知識を得られるであろうと考えていた。VJEPのプログラムにおいて、私のこの自信は崩れ去り、不安は的中した。
 実際ベトナムに行くと、ベトナム人学生の能力の高さに驚かされた。プレゼンテーションは上手であり、子供たちの相手もそつなくこなす。なかでも、英語での議論には圧倒された。
積極的に自分の意見を英語で伝える姿勢は、私の目にはかっこよく映った。一方の私は、日常会話はできるものの、議論は全くであった。そもそも意見すらしっかり持っていない。自分の意見があったとしても、英語で十分に伝えきれない。ないない尽くしであった。自分とベトナム人との能力の差を目の当たりにした私は、あきらめるのではなくその場でできる努力を行った。その1つは、まず自分の意見を持つこと。どちらでもいいではなく、自分の考えをはっきりさせるようにした。2つめには、周りが使っている英語表現や辞書を引かなくてもいいレベルの単語を使って自分の意見を伝えることである。難しく考えたり、文法に気を取られたりしてしまうと、本当に伝えたいことが伝わらないと感じたからだ。この2つの点に気を付けることで、ベトナム人学生とベトナムや日本の状況について深い会話をすることができた。
 さらに、ベトナム人のパワフルさも驚きであった。それは、東南アジア全体の活気を表すようなものであった。いつでもどんなところでも全力で楽しむ様子を見て、見習おうと思いともに行動したが、ついていけない面が多々あった。最終的には疲労困憊でほかのメンバーからも心配されるような有様となってしまっていた。やはり自分のペースを把握しておくことは、生活していくうえで重要であると感じるきっかけとなった。

 最後に、今回のプログラムのテーマである「貧困と教育」に関する学びについては、自分の中では不完全燃焼感があった。その原因として、自分の無知さがあげられる。そもそも一般的な貧困や教育に関する理論などを全く理解していなかった。ベトナムの大学での講義で知識を得る機会はあったが、それを自分に落とし込めたかというとそうではなかった。また、日本の貧困や教育についてはプレゼンテーションで発表したレベルでの知識しか持っておらず、ベトナムの状況との比較が困難な点があった。実際、Budang地域での貧困地区訪問や小学校でのTeachingでは、現地の貧困や教育がどの程度のレベルであるかの判断が難しかった。現地に行って状況を見れば、おのずとわかると思っていた私の考えの浅はかさを思い知った。
 VJEP2018に参加して、今までの自信が揺らいでしまったこともあったが、その分得られたこともあった。1つめは、英語での意見の伝え方である。英会話自体はもともとこなすことができたが、議論となると委縮してしまうことがあった。しかし自分の立場をはっきり表し、文法にとらわれずに伝えることで、より中身の濃い英語での議論ができることを知った。2つめは、自分のペースの把握についてである。「郷に入っては郷に従え」ということわざにもあるように、海外に行ったら現地の生活に合わせることが必要だ。しかし、私は東南アジアに何度も行ったことがあるという慣れから、過剰にベトナム人の生活に合わせようとしてしまったために、調子を悪くしてしまった。普段自分がどんなにアクティブだったとしても、自分のペースを把握し、アクセル全開にしすぎないよう調整することが大事であると思った。3つめは、事前に知識を入れておくことの大切さである。ひたすら経験を積むことも大事であるが、知識がないとその経験から学ぶことができない場合もあると知った。今まで、人よりも多くのさまざまな経験を積むことを目標として大学生活を過ごしてきた私にとっては、遅すぎる気付きであったのかもしれない。

 来年から社会人になる私にとって、VJEPは長期間海外で現地の学生と学ぶ最後の機会であった。そして、社会人になってからも役に立つ気づきや経験、知識を得ることができた。今後はこの学びを生かして、残りの学生生活を後悔のないものにしていきたいと考えている。

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