「ネパールリポート」
小林晴美(アメリカ創価大学3年)
カルチャーショックを受けたい。そんな単純な気持ちが私の今回の活動の動機だった。
私は物心つく前から父の仕事の関係で中国で育ててもらった。中国文化に触れつつも、家では家族から日本の文化を学んでいたので、二つの文化の違いを日々感じ、「カルチャーショック」と言うものを受けたことがなかった。だからもっと違う角度から世界を見たい、もっと違う物事の考え方、感じ方をしたいと思った。そう思いつつも、傲慢にも自分は文化の違いに慣れているとも思い、そこまで構えていなかった。しかし私がタクシーに乗ってネパールの空港を出ると、そこにはネパールの現実が待っていた。
電信柱が見えないほど絡まる電線。砂埃で見たことも無いような空の色。隙間があれば、我先にとクラクションを鳴らしながら車やバイクが割り込んでくる。一方、道路の脇では、野良犬が体を休め、牛がのんびりと草を食べでいた。混沌とした世界――しかし、その中にも生き抜く命の力強さを感じる。それが私の2週間のネパール生活を通しての感想であった。
一番心に残っているのは、ネパール人のエネルギーとキラキラな笑顔だった。どんな小さい事でも何度でも笑えるネパール人。最初は冷静にすごいなって思って、一歩引いていた。そんな私でもみんなと毎日が笑顔に溢れている2週間も過ごしてく中で、だんだん釣られて心から笑うようになった。今でも当時の写真やビデオを見返すと、いつも笑顔になるのはきっとみんなの笑顔があったからだと思う。
笑顔には、不思議な力があると感じた。誰もが明るく強く生き抜き、幸福を広げることができる。そんなことをネパールのメンバーから気づいたら学んでいたと思う。
さらに自分にとって一番の収穫は「人の幸せを自分の物差しで考えない」と言うことを学んだこと。このプログラムの一環で、シクレスと言う村に行き、村人に「幸せ」についてインタビューをした。街からジープにのって、整備されてなく、くねくねした山道を約5時間かけて移動した。到着すると村の女性たちが歓迎の儀式を行ってくれ、感動した。しかし、村に着いた時、私はこの村の人たちの為に、まず道を整備し、wifiを繋げてあげて、生活の質を上げてあげたいと、その時は真剣だったが、今思えばとても上から目線で考えていた。
村で過ごした4日間、私たちは小学校で模擬授業をし、村の子供と触れ合う機会もありつつ、村の大人たちとも「幸せ」について話を聞くことができた。その中で驚いたことは、年齢を問わず調査したほぼ全ての人が「幸せである」と答えたこと。さらに、「都市は人との関わり合いが少ないから、都市に住みたく無い」と言う村人までいた。「幸せ」とは人が成長した環境によって一人一人大きく変わるのだと気づくことができた。だからこそ、自分の「幸せ」を良かれと思い、人に押し付けてしまっていた自分の愚かさに気づくことができた。それは助けている人のことを本当に思っていない行為であり、自己満足に過ぎないと知ることができ、と同時に人のために本当の助けをさせて頂く難しさを知ることができた。
心に置いている引用の一つで“Fairness does not mean everyone gets the same. Fairness means everyone gets what they need.” (公平とは全員に同じものを与える事ではなく、全員が必要な物を得られるようにする事である)と言う一句がある。ネパールの経験を通して、その言葉の意味が私の中でさらに深まることができた。私が今通っている大学は大学に行けない人たちの為にある。将来私が社会に出た時、大学に行けない人たちの為に何かできることを考えるのに、とても大事なレッスンをネパールの地で、授業や教科書ではなく実体験を通して学べたことに感謝でいっぱいになった。
この2週間、カルチャーショックはもちろんのこと、沢山の人生の学びができ、想像を遥かに超える実りの多いネパールプログラムとなった。今でもネパールでできた友達とSNSを通じて繋がっていて、学校生活や好きな音楽をシェアしながら連絡を取っている。今回のプログラムに関わってくださった全ての方々に、感謝してもしきれない。この経験を生かし、将来絶対に沢山の人に恩返しをしていく決意をここに書き、このレポートを終わりにしたいと思う。本当にありがとうございました。
小林晴美
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