2019年10月2日水曜日

AAEEネパールMero Sathi Project 2019 8月プログラム 報告書(2)佐久間優乃(筑波大学筑波大学人文・文化学群 人文学類2年)


 「幸せと教育」
 これがネパールMero Sathi Project 2019のテーマだった。


このプログラムに参加する前、幸せについて考える以前に、私は日本人メンバー・ネパール人メンバーと打ち解けられるのか、2週間みんなと一緒にやっていけるのか、という不安の方がネパールへ行くことに対する期待や好奇心よりもはるかに大きかった。それは自分が内気な性格であり、さらに英語力など様々な面での自分の力不足を痛感していたからだ。皆のように英語でコミュニケーションをとることができず、メンバーにあきれられてしまうのではないかと不安に感じていた。常に周りの目を意識し、常に周りと自分を比べようとしていた。

 また、プログラム参加前、私は自分が今幸せなのか、分からなかった。特別自分が不幸であると思ったことはなかったが、だからといって「私は今幸せだ。」と断言することもできなかった。それは自分にとっての幸せが何であるのかが分からなかったからであろう。おいしいものを食べているとき、友だちとはしゃいでいるときなど、「楽しい、うれしい」と思う瞬間はたくさんあるが、それを本当に自分にとっての幸せと言っていいのかが分からなかった。また、幸せと教育がどう関係するのか、どう結びつくのかも自分の中で答えを見つけることができないまま出発の日を迎えた。

このプログラムの中にはたくさんのアクティビティが盛り込まれており、毎日が刺激的で、本当に充実した生活を送ることができた。大学、企業、学校、村、老人ホームなど多くの場所に足を運び、自分の目で実際に見、またインタビューやプレゼンを行うことで、幅広い観点から「幸せ」について考えることができた。

中でも私が特に印象に残っているアクティビティは村や老人ホームでの調査活動である。この2つの調査活動を通して私はある共通点を見つけた。それはネパールの人たちは「現状に満足し、今のライフスタイルに幸せを感じている」ということである。私から見ると、不足しているものが多く、不便だと思ってしまうような生活であるにも関わらず、である。
日本のような先進国ではあらゆる場面で膨大な選択肢の中からどれか1つを選択することを迫られる。この選択肢の多さこそが私たちに満足感を感じにくくさせているのではないかと感じた。自分が選んだものと選ばなかったもの(もしくは他人が選んだもの)を常に比較し、時には後悔し劣等感を抱いてしまうからである。また、ものが多くありすぎることも私たちに幸せを感じにくくさせている一因かもしれない。ものが多く存在することで、「欲しい→買う→欲しい→買う…」の無限ループができてしまい、いつまでたっても自分の欲求を満たすことが出来ないからである。ネパールの村や老人ホームで暮らしている方々は自分を誰かと比べることなく、おかれた環境や持っているもので満足し、幸せを感じていた。幸せかどうかは人と比べて考えることではなく、あくまでも自分の物差しで測るものなのだ。常に周りの目を気にして、自分と他人を比べ、自分に劣等感を抱いていた私にとってこの発見をできたことは大きな収穫だった。

 多くの人が「幸せはお金では買えない」と断言している姿も印象的だった。生きる上でお金が必要不可欠であることは間違いない。しかし、お金では限られたものしか買うことができない。幸せ=お金ではなく、幸せとは家族や友人とともに過ごすこと、顔と顔を合わせてコミュニケーションをとることである、と多くの人が口をそろえて言っていた。スマホが普及している今、いつでもだれとでもLINEやメッセンジャーで連絡を取ることができる。このこと自体が悪いことだとは思わない。しかし、画面と向き合うだけの表面上のコミュニケーションばかりが増え、本当の意味でのコミュニケーションが減っているのではないだろうか。幸せ=誰かとともに時間を過ごすこと、誰かとコミュニケーションをとること、であると考えるならば私たちは「幸せ」と感じる機会を自ら逃していることになる。
また、今回のテーマは「幸せと教育」であったが、今回の調査活動を通じて教育(ここでは学校で教育を受けること)と幸せがイコールとは限らないのではないかと感じた。教育はあくまでもある形の幸せをつくる1つの道具である。学校で教育を受けることができなくても日常生活の中でたくさんのことを学ぶことができる。学校で教育を受けることができなくても「今幸せである」と答えた方は数多くいた。

「幸せとは何か」
 この問いに対する答えは人それぞれであろうし、正直なところ、私自身この問いに対する明確な答えはまだわからない。しかし、これだけは言える。幸せかどうかを決めるのは周りではなく、自分自身である。
「自分と他人を比べる必要はない」―と気づいた今の私は確実に幸せに一歩近づいていると思う。

ネパール人メンバーとは宿泊するホテルや移動中の車の中でたわいもない話からアカデミックな話までたくさんのことを話した。ネパール人メンバーは私に本当に多くのことを教えてくれた。彼らの知識量に驚くとともに、逆の立場だったら私は日本のことをこんなに説明できるだろうかと焦りを感じた。
2週間ネパールで生活する中で、ネパールの良さを実感すると同時に日本のすばらしさも実感した。もっと日本のことを知りたい、いや、知らないといけないと感じた。ネパールで過ごした2週間は私にとってかけがいのない思い出である。この2週間で本当にたくさんの刺激を受け、私ももっと頑張らないといけないと強く感じた。ネパールMero Sathi Project 2019に関わったすべての方々に感謝の気持ちでいっぱいである。本当にありがとうございました。


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