2019年10月11日金曜日

VJEP2019ベトナム―日本学生交流プログラム 報告書(3)浅岡なつき(上智大学法学部1年)

「教科書を超える学び」

上智大学1年 浅岡なつき

 
「SDGsに興味がある!」私はその好奇心でこのプログラムに参加した。現在、世界中でSustainable Development Goalsが注目を浴び、2030年までにそれらが達成させられることが望ましいとされているように、日々解決に向けたアクションを起こしている人も少なからずいるのではないだろうか。このような国際目標が世間に提示されるのには、1つの大きな理由がある。世界で多くの問題が生じているからだ。私は日本で生まれ日本で育ち、世界的に見ると比較的何不自由ない豊かな生活を送ってきた。「国際問題」と聞くと、テレビや新聞などのメディアで報道される情報や、授業や教科書等から勉学としての知識を連想させられることが多かった。環境や貧困など、社会問題の多くは直接目で見ることが難しい。しかし今回のプログラムに参加して、改めて社会問題の実際の姿と自分がグローバル社会で社会問題に沿って地球を支えていかなければいけない一員であることを認識できた。
 まず、国外に行き異文化を体験することから得るものは、書物よりもはるかに上回る。ホームステイでは、ビンフックという比較的田舎な地域へ行き、少数派民族の存在を感じた。ホームステイ期間中は、ベトナム初等教育の諸問題やエスニックマイノリティに関するベトナム国内での問題の深刻さについて話した。多くの少数派民族は公用語であるベトナム語を話さず、それぞれの民族特有の言語を用いて話すため、安い賃金での労働問題やコミュニケーションの欠如などが問題視されていると聞いた。また、ホストマザーが地域の小学校の先生として働いているため、少数派民族の子供が学校に来ても言語や文化の違いからその環境に耐えられず不登校になったり、授業中に逃げてしまったりする現状を教えてくださった。多文化共生社会の実現は想像より難しく、全ての人が平等で文化的な生活を送ることができるためにも一刻でも早く解決すべき問題の一つである。そしてそれは国外だけに留まるものではない。日本国内でも近年では外国人労働者が増加している。日本は島国で、歴史上植民地化されることなく、自国の文化を貫いてきた国だ。だから、少数民族が多くなく多くの人々は異文化や異国人に慣れていない。更に至る所で聞こえるのは母国語である日本語だ。言語や価値観も違う人間間の中で、私たちがどのように多様性を受容した社会を作っていくかが今後の課題である。自国とベトナムでは、社会の構造や歴史が異なる中で、このようなリアルな話を現地人から聞くことができたのは貴重なことだと思う。普段ニュースや書籍、授業から、エスニックマイノリティや貧困問題などを国際問題として頭に置いていがちだが、ほとんどの人がその問題を個人のもの、身近なこととして受け入れず、国外で起こっている無関係なことだという固定概念があるのではないだろうか。少なくても私はそのような人の一人であった。実際の場所に行ってみて現地の人の話や意見を直接聞くことは、その人の感情や気持ちを感じとりながら、間接的に見るメディアを超える知識を得られると改めて実感できた。
 また、ベトナムでは未だ、都市付近でさえもインフラ整備が不十分なところも少なくはなく、シャワーを水で浴びる生活が数日間続いたり、歩くのに困難な道もあったりと日本では体験することのできない環境下でプログラムは進んだ。自分の当たり前が当たり前でない環境での生活は慣れるまで時間がかかった。私は海外旅行が好きだが、今まで訪れた場所の多くは先進国やリゾート地であり、施設の整備が整っている何不自由ない所であった。そんな私にとって、今回の旅は、貴重な体験であった。
 最後に自身がこのプログラムを通して成長したと感じる点は、アウトカムプレゼンテーションである。プログラムの数ヶ月前から、ベトナム人と日本人大学生2人ずつで組まれたメンバーで、グループ独自の"Green Business"を考えてプレゼンするといったアクティビティである。環境のことを考えたビジネスというと、難しい課題だが、更にGreen Businessには、環境を意識するだけでなく持続可能な社会を構築することを目的としたビジネスと定義されている。これを両立できるようなものを考えるのには時間と手間がかかった。特にベトナムの現状についての知識が皆無であった私には、調べる段階から頭を抱えていた。しかし、ホストファミリーから伺った仕事の内容やアクティビティとして花屋を訪れた際に、オーナーがインターネットやSNSを使って事業や花の育て方を共有して商売経営していることなどプログラムの一つ一つにGreen Businessの中身を支えるヒントや学びがあったため、プログラムで日を重ねていくうちに、スムーズに仕上げることができた。
 今回初めて、言語力の向上やバカンス観光だけを目的とせず、環境問題というアカデミックで専門的な内容の目的を持ってプログラムへ参加することができた。もちろん楽しいだけではなく苦労することや悩むこともあったが、このプログラムを通して確実に自己の目標と将来への希望、そして支え合うことのできる国境を超えた友情を持って帰国することができたと感じる。

0 件のコメント:

コメントを投稿