「ベトナムで得た様々な財産」
上智大学総合グローバル学部1年
小池誠一
まずこの報告書の構成を、参加した理由、準備期間の出来事、その出来事についての反省、渡航前に個人で立てた目標とその振り返り、まとめ、に分けた。
今回私がこのプログラムに参加した理由は本当に単純で、大学に入って最初の長い夏休みだからこそできる経験をしたい、という考えがあったからだ。今まで行ったことのない東南アジアの国であるベトナム。ただの旅行ではなく、ベトナムの大学生と交流ができる。これからの大学生活に生きるような充実した2週間。大学に入ったら今まで以上にいろんな機会に飛び込もうと入学する時に決めていたので、ほとんど迷わずに決めた。そして今は行ってみて本当に良かったと感じている。
いよいよメンバーも揃い、4月下旬、VJEP日本メンバー10人がいるLINEのグループが作られた。始めにトーク上で自己紹介をした時、特別なにも考えずに適当に書いてしまった。のちのメンバーの自己紹介を見て、こんな自分で大丈夫だろうかという一抹の不安と、どのような人たちなのだろうという期待が混じっていたのをよく覚えている。おそらく全員がそうであろうが、このメンバーでベトナムに行くのだというイメージや実感はその時は皆無であった。しかし、初めて都合がつくメンバーでの顔合わせから事前合宿に至るまで、皆かなり積極的に意見を出していた。実際関先生も同じことをおっしゃっていた。この時期の準備段階では、ほぼ不安要素はなかった。事前のオリンピックセンターでの合宿で、パフォーマンスの曲、プレゼンテーションの大方の内容、劇の流れや配役、順調に色んなことが決まっていった。
しかし帰国後に振り返ってみると、私たち一人一人がどれだけ決めたことに対して行動できるかということを、準備の段階で共有できていなかったことに気がついた。初めの方はいつ誰が何をどうやるかを決めるだけであったため、アイデアさえ出てくればあとは絞る作業で、この作業においては皆の力は十二分に発揮されていた。しかし実際に準備が本格的になってくると、コミット量に差が出始め、作業がスムーズに進まなかったりと、幾つも混乱が生じた。
特に顕著に現れたのはプレゼンテーションと劇の準備である。双方に言えることは、人それぞれ忙しさは異なり、優先順位も異なるのは分かっていたのにも関わらず、自ら積極的に周りを見て準備をできたメンバーは少なかったということだ。各リーダーを含めてメンバー同士が、基本的な報告連絡相談が出来ていなかったことにより、色々なものが後回しになってしまった。このことが、特定のメンバーへの負担の増大に直結した。学生アシスタントの吉川先輩の助けなしではプレゼンテーションは完成しなかった。
劇に関して言えば、最後の最後まで後回しになってしまい、せっかく準備の状況を整えていても、周りのメンバーが他のことで手一杯になっている状態であるため、劇のことを考えられない期間が長かった。結局、披露する当日の1時間弱のリハーサルで何とか揃えたが、クオリティの面では大きくベトナム側を下回っていたと思う。例えば劇の後のディスカッションである。日本メンバーで、劇の後にディスカッションがやりたいという要望をしたのにもかかわらずその下準備が一切できていないという状況になってしまった。
これらすべての出来事を踏まえ、自分の気持ちは、事前合宿が終わって以降ずっと満足していることはなかった。常に何かしらで焦っていた。しかしその焦りに対して、自分が行動に移さずに放っておいたため、ここまで準備期間にうまく事が運ばない事態が起きたのではないかと考えている。考えてみれば、10人中6人が上智大学の綜合グローバル学部であり、10人全員とはいかずとも数人単位で集まることは確実に出来た。2週間に1度程度上智のメンバーだけでも顔を合わせて、進捗を確認したり、作業を進めたりすることはおそらく可能であった。その都度打ち合わせの内容は共有する約束を事前に立てておけば揉め事が起こることも無いだろう。自分たちが今何をやっているのかを定期的に確認できている状態であれば、より準備期間でできる事が増えただろうし、他大のメンバーで集まった時にすることもよりはっきりしたと思う。
このような、今考えれば分かりきったことをなぜできなかったのか考えてみた。今まで多くのことを他人に任せて、自分で行うことをしてこなかったことが一番にあげられると思う。自分が真っ先にやらなくても今までは機能していた組織にいたため、自分が行動しないことで起きるリスクについて甘く考えすぎていた。また、少し考えてはいても、もし上手くいかなかったらどうしようなどと考え、行動を起こすことをためらった部分がある。
私は自分が0から何かをスタートさせるということが得意ではない。しかしこれは言い訳に過ぎない。このプログラムを通じて、リーダーというものを経験し、大きな学びがここにある。私は、例えたった10人しかいないグループや組織でも、リーダーと言われる立場の人は、皆に任せようとするのではなく自らがまず指針を示すことや動き始めることが必要で、調整役に徹するのは方向を示した後であるということを学んだ。
私は自分の意思をすぐに決定したりその決定を言語化したりすることが得意ではない。しかし、だからと言ってその意思決定をメンバーに求めると、各々が意見を発信した上で皆の意見を尊重してまとめるというステップを踏むため、時間も労力もかかってしまう。それよりはまず自分の意思を明確にしてメンバーに伝えた上で調整をするようにすればより上手く行くということを身をもって理解することができた。このことは小さなことかもしれないが、自分にとって大きな学びとなった。のちにも生かしていきたい。また、自分の弱みとして、状況が悪化しているものに手をつけたくないという実に幼い考え方は本当に改めなければ、この先永久に苦労すると感じた。ベトナムに行かずともこのことは理解しなければいけないが、改めて自分の未熟さを思い知らされた。
ここまで「リーダー」という言葉を連呼してきた。ではなぜここまで自分がここに固執しているのかというと、自分はベトナムに行く前にある目標を立てたからだ。「ベトナムで、しっかりリーダーとしてリーダーシップを発揮して行動する」である。この目標を立てた時には特に何も疑問を感じなかったが、今振り返って考えると、そもそもリーダーシップとは何かということについて全く考えていなかったことに気がついた。自分が発揮するリーダーシップは何か、その上でどのようなリーダーになるのか。このことを深く考えずに目標にしていたため、帰国してからも果たして自分は目標通りに行動できたのかわからないでいたのだ。
では、リーダーシップとは何か、という問いを自分にぶつけた時、はっきりとした答えは出なかった。つまり、リーダーシップとは、一つに定義されるものがないのだ。そして人によって強み弱みが違うことと同じく、発揮するリーダーシップにもその人固有のものがある。口数が少なくても行動で示せる人にはもちろん皆を引っ張っていくリーダーシップが存在する。逆に言葉で影響力を与え、皆を引っ張るリーダーシップのスタイルもある。場の空気を和ませ、皆が快適に過ごせるような雰囲気を作れるのももちろんリーダーシップである。また、自分は嫌われてもいいから、皆と本音で接することで、組織をより良いものにしようとする力もリーダーシップである。このように、リーダーシップには調整型、行動型や指示型などいろいろあると考えさせられた。そして様々な型があるのなら、別にリーダーにならなくてもサポートする側としてリーダーシップは発揮できるということでもある。
次に考えたことは、自分の理想である。自分の価値観から考えて、グループ内の信頼関係、そして規律をまず最重要視するタイプであると思う。今回のような二週間ずっと同じメンバーで生活するような濃い内容のプログラムの際、お互いの気持ちを言い合えるような信頼関係が必須だと強く感じたが、そこまでの関係構築まで持って行けたかと言えば疑問が残る。仲が良いことは間違いないが、お互いを批判するということに関しては十分にできなかった。この批判というのは悪い意味ではなく、プログラムをよりスムーズに、不満をなくすためには必ず必要だと考えている。またの機会に非常に役に立つ経験を得ることができて、本当にこのVJEPに参加できたことに感謝している。
最後に、この報告書の中で、ベトナム人たちとの交流についてあまり触れていないが、様々なアクティビティーを通して、多くの絆を得ることができた。しかし、今回は準備期間を含めて、活動期間中、オーガナイザーの指示を皆に伝えるなど、常に全体を見なければいけないことが多く、また3日ほど病気にもなり、個人としては不完全燃焼の部分が実は多い。全体のことでも個人のことでも悔しい思いも多くした。皆のことを考えて自分のことを我慢せざるを得ないことも多々あった。もっと自分にタイムマネジメント能力や、スイッチのオンオフの切り替えの力、切羽詰まった状況でも冷静でいることができる力があればと考えることが多くあった。つまり、自分の弱みと対峙する時間が本当に多かった。また、自分の性格的に、過去のことを現在まで引っ張る傾向がある。だからこそ余計うまくいかなかった時に落ち込んだり、後悔したり自信がなくなったりと不安定になるのだが、そのような経験もまた、自分を大きくするものだと信じて、これからも様々な機会に飛び込んでみたいと思う。
もうVJEP2017は二度と帰ってこない。しかし、今回できた日本人ベトナム人参加者合わせて20人の絆は変わらない。支えてくれたオーガナイザー、日本の学生アシスタントの先輩方、そして関先生、この一生ものの出会いを大切にしてこれからも過ごしていこうと思う。自分にとって初めてのベトナムをこのような素晴らしい機会にしてくれた全ての人々に感謝をしたい。
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