2017年10月4日水曜日

ベトナム VJEP 2017 報告書 (3) 中里咲季(上智大学総合グローバル学部1年)「初めて触れたリアルな東南アジア」

VJEP 2017-ベトナムプロジェクト報告書


「初めて触れたリアルな東南アジア」

上智大学 総合グローバル学部
総合グローバル学科1年
中里 咲季

1、参加を決意するにあたって
 私にとってこのVJEPのプログラムで訪れたベトナムは5か国目の外国であった。さらに、東南アジアに限ると3か国目である。カンボジアとタイへ訪れたときは、旅行会社や高校の研修を利用しての渡航であったが、その国で生活をする同じ世代の人と交流する機会はほとんどなく、せいぜい高校訪問をして数時間歌やパフォーマンス、伝統的な遊びや衣装を着せてもらったくらいだった。それでも、ボランティア活動や国際協力の現場を目にしたり観光をしたりする中で人々が熱く発展に向かっている様子などを肌で感じて東南アジアが大好きになった。
 しかしその一方で、旅行会社が企画したプログラムでは孤児院訪問をしてカンボジアに存在する貧困を「見せられている」と感じることがあった。高校のプログラムも同様だ、どちらも学ぶことは沢山あったのは事実であるが「作られている、あるいは私たちが求めているものに合わせた現場」を見せられたのであって、本当の現場を見たのではないと違和感を持った。もちろん、その現場には解決しなければならない課題もたくさんある。高校時代の2回の東南アジアへの渡航やその他の活動を通じて私は、国際問題の根やその問題が解決しない構造を見つけ出せる人になりたいと考えるようにもなった。
 そこで、自身が東南アジアにおいて課題だと考えていることを現地の同世代はどう考えているのか知りたいと強く思い、まずは彼らと友達になりたいと考えた。なぜなら、日本で生活をしている私が考えられることやできることは限りなく0に近くて本当に状況を変えていくのはその国の次世代を担っていく学生だと考えるからである。さらに、親しくなることによってよりリアルな本音で話しあうことができるのでないかと考えたからである。私がこのプログラムに参加することを決めたのは、昨年参加した信頼する先輩の紹介があったという事とこの思いに尽きる。(実際はVJEPが今年度も開催されると耳にして、その場で参加をほぼ決めたのでただ「面白そう」というのが理由で、この理由は後付けかもしれないが。)

2、ベトナムから見た日本
 空港を出て一番に目に飛び込んできたのは、日本企業の広告だった。また空港からホテルへ向かう途中で日系のデパートや、日本からの国際協力をもとにして建設している途中の建物、日本食のレストランなど日本に関連しているものが多くあった。ベトナムで日本を感じられるのは、街並みだけではなかった。ベトナムの参加者のうち2人は、日本語検定で一級を取得していた。さらにほとんど半数の参加者は日本語を学習していた。訪問先の高校でも、日本語で話しかけられることも多く驚いた。 
 私は東南アジアでは日本が戦後、急速に経済発展する様子を見て再び植民地化されることを恐れて反日の動きがあったと耳にしたことがある。それは、日本が東南アジアと友好関係を築こうとして行なっている事業での出来事であるが、石を投げつけられたこともあったそうだ。それでも、あくまでも私の主観でしかないが、ベトナムで出会った学生たちは日本人である私たちに興味を持ってくれたのではないだろうか。
 昔の状況からどのようにして現在の日本に対する印象が変わったのか、はっきりとは分からない。それでも、これからも急速に経済発展をする日本とも地理的に近いベトナムという国、東南アジアという地域は私たちにとってとても重要になってくると強く感じている。そんな国の同世代の学生とともに過ごした2週間で学んだことはあまりにも多すぎて、うまく文章にすることは出来ない。しかし「見せられて」いる表層的なベトナムではなく、ともに生活をともにして肌で感じたベトナムであり、そこで生活をしている人との交流でしか知ることの出来ない「リアルな」ベトナムを体験できた。

3、ともに生活をして目にしたベトナム
 私たちが2週間をともに過ごしたのは、ホーチミンの大学に通っていてとても優秀な学生たちだった。彼らの方が英語力に長けていて、説明の英語が分からないときも学生に聞いたら分かりやすく簡単な英語で説明をしてくれた。また何度もあったスケジュールの変更にも柔軟に対応してプレゼンテーションの方法を1日で改善してしまうなど驚かされた。それでいて、日本に関する経済や政治などの知識も豊富で学習意欲がとても高かった。しかし、彼らの中で留学をしたことのあるメンバーはほとんどいなかった。ベトナムでは、英語が話せなければ良い職に就くことができないから、日本語が話せるとさらに給料が高くなるからと彼らは話してくれた。私は、日本にいて異文化交流や留学、インターンシップなど様々な課外活動の機会に恵まれていたり、英語力も高めたりする時間も環境もあるさらに、学問的な本も日本語でいくらでも勉強できるからうらやましいと言われた。そんな環境にいるのにも関わらず大学に入ってからただ平然と時間を過ごしてきた自分が情けなくなった。
 彼らの目指している先には日本があって、それに向かって日々大学で学んでいたり英語を学ぶためにクラブや学校に通ったりしている。さらに、就職ではインターンシップや学生交流など課外活動が重視されるためそれらの活動も盛んにしていた。2週間を通じて、ただただ彼らに圧倒され続けていた。そんな勉強熱心で社交的でいてさらに明るい、尊敬するベトナムメンバーとオーガナイザー(このVJEPのプログラムに向けて、仕事をしながらも準備を進めてくれた)であったが、ビンフックでの活動では様々な困難があった。
 ビンフックでの活動では、ベトナム政府の人がアレンジした活動が主に行われた。あらかじめオーガナイザーと政府の人が話し合ってスケジュールが日本人メンバーのために組み立てられていたのだが、このプログラムが始まる寸前から何度も変更が行われた。さらに、訪問先の高校や活動場所でも日本人メンバーの席しかないことや、ベトナムメンバーが練習していたパフォーマンスが削られてしまうことが続いた。さらに、政府の人と会議をすることが突然決まったこともあった。ベトナムメンバーはこれらに関して、不満を口にすることがだんだんと多くなった。そうした中で、社会主義国と分類される国であるベトナムで生活をしていく上での、特有の文化についてまた彼らが持つ個人的な悩みや葛藤についてもリアルな話を聞くことが出来た。話を聞いたからといって、特に何かが自分に出来るなんて到底思わないが、なかなか実際に体験できない貴重な機会だった。

 最後に、ここで文字に起こしたことだけでなく日々友達と体験したことを共有したり、本を読んだりしたりする中で考えさせられる体験をたくさんしてきた。このプログラムの一番の目的は「仲良くなる」ことだ。仲良くなることで築いた強い友好関係をもとに、少し難しいテーマについて話しあったり国際問題について議論したりすることで少しでもそれらの解決や改善に近づけると考える。
 このような素敵な機会を与えてくださった関先生、大変なこともたくさんあったけれど私たち参加メンバーを支えてくれたオーガナイザー、私の尊敬する大切な友達であるベトナムメンバー、日本メンバー本当にありがとうございます。

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