「異文化交流で学んだ大切なこと」
上智大学総合グローバル学部1年
吉田梨乃
タンソンニャット空港で日本人学生メンバーの登場を待つこと4時間。私の心は、疲労感ではなく、期待感でいっぱいだった。日本人メンバーの中でわたしは唯一、東京経済大学の学生ではない上に、彼らとの活動歴が少なかったせいか日本で仲良くなる機会を作ることがなかなかできなかった。もちろん、溶け込めるか不安で仕方なかったわけだが、緊張感はあまりなかった。むしろ、これから始まる2週間のプログラムで日本人・ベトナム人を含め、どれだけの多くの人たちに出会えるのか、私自身楽しみでならなかった。空港で感じた期待感は、新しい出会いへの楽しみが疲労や緊張を勝った結果、そのものであった。
私は8月のAAEE、アジア教育交流研究機構主催の学生交流プログラムに参加していたため、早くからホーチミンに駐在していた。そのため、プログラム前からベトナム人学生メンバーと会う機会を設けることができ、早くから交流し、親睦を深めることができた。今回の9月のVJYE研修での私の役割は参加者であると同時に、日本メンバーをサポートすることであった。そのために、早くからベトナム人学生メンバーとプログラムの準備に関しての打ち合わせをしたり、どうしたらより円滑に日本人・ベトナム人学生がお互いに交流することができるかについての策を考えたりなど。私自身、多くのベトナムメンバーが優しくそしてフレンドリーに接してくれたことを本当に嬉しく感じた。本稿では、異文化の人と交流を通じて学んだ大切なことを自身の経験談を通じて気づき、学んだことを記すと同時に、ベトナムゼミ研修の活動報告としたいと思う。
第一に、私が学んだのは「笑顔の大切さ」である。笑顔は世界共通だ、そんな言葉がグローバル化における現代ではよく飛び交っているが、このプログラムが始まる前は、実は私はただの辛気臭い言葉と思い、全く信じていなかった。幼い頃から、インターナショナルスクールで英語を学んできた身として、英語ができなければ異文化の人と対話することは不可能であると信じていて、むしろ今まで最も重視してきたものは、英語力がどれだけ秀でているか、それだけであった。しかし、私は今回のVJYE研修でどんなに英語ができていても、笑顔がなければ異文化交流はうまくいくものではないと思い知ったのである。
実を言えば、私は昔から夜更かしが好きな上に、早寝早起きが大の苦手で、さらに表情が硬く、第一印象はいつも「怖そう」「話しかけにくそう」とマイナスなイメージしか抱かれたことがなかった。そのため、どんなに英語を話すことができようとも、積極的に外国人から話しかけられたことは今まであまり体験してきたことがなく、日本人だけに限らず、外国人にでさえ、怖がれることがほとんどであった。もちろん、そのことを自分でもよく理解していたので、私はベトナム人学生と交流する際、徹底していつでもどんな時でも笑顔で親しみやすい人でいるようにした。そうすれば、得意とする英語を存分に使う機会が増えるし、サポーターとしてプログラムを作るベトナムの学生と気持ちよくコミュニケーションが取れなければ役割を担うことなど到底無理だと考えたからだ。
さらに言えば、朝起きるのが苦手な私は、夜更かしをやめ、しっかりと睡眠と食事をとることで笑顔を作りやすいように努めてみた。すると、笑顔が増えた私に、気付いたらベトナムメンバーが話しかけてくれたり、親しみやすく気軽に声をかけてくれた。私は非常に単純なことだが、異文化交流をする際、英語の重要性の他に笑顔やどれだけ親しみを持ってもらえるように接するかが非常に大切になってくるのだということを身をもって学ぶことができた。少なくとも私が見る限り、多くの日本人は異文化交流を図る際、自らの英語力のなさに失望し、異文化交流には英語力がどんなに必要か思い知らされたと述べることがある。しかし、たとえ英語力がどんなに秀でていようと相手に自分とコミュニケーションをとりたいと感じさせる能力が足りない場合、異文化交流を気持ち良く進めることはとても困難になってしまうのである。もちろん、英語がしゃべれることは有利であるが、それはただの特権に過ぎず、むしろ英語力が秀でていなくとも、積極的に相手と笑顔で接し、気軽に話しかけやすい人である方が異文化交流において必要とされるのではないだろうか。