「ベトナムで知った自分の貧しさ」
上智大学総合グローバル学部
総合グローバル学科1年
櫻井爽太
右端が私、櫻井爽太 |
今から私がこのツアーで学んできたことを記述していこうと思う。第一に笑顔の大切さである。ベトナム、日本それぞれの参加者がコミュニケーションを取る際に用いられる言語は英語であった。しかし、参加者(特に私を含めた日本人)の中には英語を不得手とするものが数名いた。しかし、英語が苦手であったとしても私たちはベトナム人と良好な関係を築いていた。それができた要因はやはり笑顔が大きいと私は思う。私の好きな歌の歌詞に「いま世界の共通言語は、英語じゃなくて笑顔だと思う」という歌詞があり、今まで私はその歌詞をポエム気質なキャッチーな歌詞でしかないと思っていた。しかし今回のプログラムで笑顔の大事さを認識した。もし英語でうまく言葉が出てこず支離滅裂なことを言ってしまったとしても、笑顔で接すれば敵意を持っていないことは相手に伝わる。また、相手が英語を話せない人の場合であってもほほ笑めば微笑み返してくれる。これは言語よりもっと原始的な人間の行う普遍的なコミュニケーションでありどんな言語よりも早くかつ、深く交流することができることを可能にしている。アイデンティティの全く違う者たちが笑顔一つで距離を縮められるとは、とても素晴らしいことではないだろうか。無駄のない究極のコミュニケーションは笑顔であると強く感じた。
次に私が感じたのはアイデンティティの異なる相手の立場になって物事を考えることの難しさである。これは本当に私にとって難しいものであった。というのも、バイクでの小事故をきっかけとして開かれたベトナム、日本のメンバーがそれぞれの本音を話すミーティングで、一方が当たり前であり、慣れっこであるというものが、他方にとっては全くの未知のものあるいは非常識的な物であるということがあるというのを話し合いの中で感じることがあった。先ほども述べたが人間というものは己の価値観を日々の生活の上で成立させ、それに当てはまらないものに対しては違和感や嫌悪感を感じる。現に私もミーティングの中で違和感を感じることが数度あった。国際協力や国際貢献といったフィールドで物事を考える際にはもっと複雑なアイデンティティに関する問題がおこるのだろうと感じ、多国間で一枚岩になることがいかに難しいか、学生レベルの国際交流で相互のすれ違いが起きるというのだから国際機関のステージではより困難を極めるのであろうと改めて認識した。
そして、次に書く内容がこの報告書のメインになるのだが、私は裕福さ、貧しさ、先進、途上とは果たして一体何なのかを今回のプログラムを機によく考えるようになった。
日本は確かに、経済的な面で見た場合、先進国である。しかし、ベトナムはいまだ発展途上国という扱いである。そしてプログラム参加前の私はそのことを念頭に置いてばかりいた。発展途上国の現状を見るとかそんなことを考えたりしていた。しかしそれはあくまで国という評価基準に基づくものでしかない。その国にどういう人々が住み、どのような生活、光景が広がっているかなどというものは先進国とか途上国だとかという枠組みからはうかがい知ることはできないのである。
ベトナムの私たちが交流した学生たちはとても優秀であったし、向学心もとても強かった。果たしてそんな彼らに先進国だの途上国だのというものは何の意味があるのか?またそれと同様に先進国や途上国というものは何の意味があったのか?確かに町にはストリートチルドレンや物乞いがおりその面では日本との違いは見受けられた。しかし、現地の学生と交流する際にその国を評価基準としたものは全く何の意味もなかった。むしろそんなことを意識してプログラムに望んだ自分の心はとても貧しかったと思う。このような国際交流のプログラムはどこの国とどこの国の学生が交流するかという“国”に意識が行きがちだが、英語を介してしまえば国籍なんかは関係ない一個人同士の交流である。そこには先進国、途上国というクライテリアは意味をなさないということを強く感じた。優秀な人々はどの国にも存在している。しかし、そのような人々も一歩国から出れば○○人という括りにひとまとめにされてしまう。そんな現状がある中で自分は国籍や民族というものを超えた個人をしっかり見なくてはならないと強く感じた。
今回のプログラムは私にとってカルチャーショックの旅だったと言える。バイクでごった返す町、あまりにフレンドリーなホテルのボーイ、水シャワー、etc.….しかしそんな中で過ごした日々は具体的に私の何を変えたかと言われれば難しいが、しかし確実に私の何かを変えた。人とより深く触れ合うこと、言語の壁の克服。いかにそれらがこれからのグローバル化社会で重要なことであるかが肌で感じられたプログラムだった。
自分の貧しい内面としっかり向き合っていこうと思う。
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