2016年10月13日木曜日

AAEEベトナムプロジェクト<8月>報告書(7) 山森美保(上智大学総合グローバル学部1年)

「ベトナム学生交流で打破された私の先入観」

上智大学総合グローバル学部
総合グローバル学科1年
山森 美保

右が私、山森美穂。左はダー君
「ベトナム行くならボランティアのひとつくらいしてこいよ~」
これは私がバイト先の方に夏にベトナム行くと伝えた時に言われた言葉だ。なに言っているんだ、と思う一方でベトナムは途上国で先進国からの支援が必要であるという考えが先行する人は多くいるのだなと改めて思った。(たぶん私も心のどこかにもその考え方はあったと思う。)

1、先進国、途上国、支援 
しかし実際にベトナムを訪問して思ったことは、「先進国」「途上国」と簡単には区分できない複雑さがあるということだ。確かに「途上国」としてのベトナムは、トイレの水洗機能がついていないところが多いことや、バイクの使用による大気汚染が進んでいるなどの問題を抱えており、街中で物乞いをしている人にも出会った。しかし、ベトナムで出会った学生たちは(トップ層の大学に通っていることも大きな要因ではあるが)、英語は私よりも確実に得意で、学習意欲も高く、その上仕事も早く、いわゆる「途上国」の「支援が必要な人々」ではないことは誰の目にも明らかであった。そして、ベトナムツアーが始まりほんの数日で「途上国の人々=能力が低い、かわいそう」という固定観念が一気に崩れ落ちた。
またここで先進国からの支援という点についても考えさせられた。実際に「途上国」と言われるベトナムには、尊敬すべき素晴らしい伝統や文化があった。それを十分に理解しない人々が自国の発展した技術を(もしかしたら自国の利益のために)途上国に押し付けるような支援はあってはならないと強く思った。その土地にあるもので、その環境に合わせたライフスタイルで暮らし、周りに大切な家族や知人がいて、それで幸せに生活できていること。これは、経済発展は十分に果たしたが、その一方で膨大な数の自殺者が生み出している日本と比べてどちらが本当の「幸せ」なのだろうと強く考えさせられた。ちなみに、ある統計によれば、人口10万人あたりの自殺者数は、日本が18.475人で、調査対象175ヵ国中18位。一方でベトナムは5,016人で125位だそうだ。(2012年の世界保健機関(WHO)のデータを元に世界ランキング国際各付けセンターが割り出した人数)

2、他者への自己表現について
次に、自分の思っていることをどこまで相手に素直に言うべきか、という観点での学びもあった。私は中学・高校時代、主に部活動において自分の意見をかなり厳しく言っていたように思う。しかし大学受験期を経て言うことよりも考える時間が増えて、大学入学後は思ったことを素直に言うことは減った。本プログラム中に、自分も関わる互いの行き違いをきっかけに日本・ベトナム全メンバーが本音で議論する時間があった。その時も、ベトナムメンバーが嫌な気分をするなら正直に言う必要はないだろうとい自分から積極的に言葉を出さずにいた。自分の本音を言ったからといって必ずそれを相手が受け入れてくれて和解するとは限らないと考えていたし、またこのツアーを平和に終わらせたいという、ある意味の「逃げ」の姿勢が先行したことも否めない。ベトナムメンバーに真正面から向き合うことを避けたと言い換えることもできる。しかし、その後、周りの日本人メンバーから思ったことは伝えるべきと促され、結局自分の気持ちを正直に話した。案の定、伝えた日の夜は雰囲気が悪くなり、「あーあ、この後のツアーどうなっちゃうのだろう。ここまで言う必要はあったのかな。」などと思った。ところが翌日自分のバディであるDaくんに呼び出され、二人きりで話し合った。すると彼は、前日の本音ミーティングの段階では表現しなかった本当の気持ちを直接言ってくれた。そして、そこから完全に打ち解けることができた。晴れ晴れとした気持になった。またプログラムの終盤では、Daくん以外のメンバーとも言葉や国籍の壁を超えて本当の友達になれたことが嬉しく、日本人メンバーと同じくらいにベトナムメンバーに対しても、心の底から出会えてよかったと思えるようになった。

3、挑戦心の大切さ
さらに、私はベトナム戦争で使用された枯葉剤の被害者、グエン・ドク氏の講演会の担当を任されたのであるが、これもとてつもなく貴重な体験であった。ドク氏は「ベトちゃん、ドクちゃん」として有名な方で、学校の教科書にも出てくるまさに歴史の証人である。今月10月には枯葉剤被害者代表として広島を訪問し、安倍首相と面談するほどの方だ。そのドク氏のご講演に先立ち、ご本人の前でプレゼンテーションをできたことは一生の財産である。実はこの任務は日本出国の直前に決まり、自分にこの大役を担えるのかという不安と、自分でやると立候補したからには絶対成功させたいというふたつの思いが交錯していた。ドク氏の講演会はプログラムの初日ということもあり、メンバーも互いに打ち解けてはおらず緊張感に包まれた中で行われた。私自身も直前までは緊張してがちがちであったが、いざプレゼンを終えると、今までにないほどの強い達成感を味わうことができた。この経験を通じ、積極的に挑戦することの大切さを学んだ。これまでの私には、自分の能力を自分で勝手に決めつけ、やれることを自分で狭めるようなことはしていたように思う。自分にもやればできる!このことは今後の生活の中でも活きていくことだと思う。

4、現場に行くことの大切さ
私は高校生の頃からアフリカの児童労働問題を解決したいという夢があり、現在在学する上智大学総合グローバル学部に入学することを決意した。それは、「子供には子供らしく笑顔でいてほしい」という思いや「生まれた国が違うだけで、その子自身の人生における選択肢が極端に減ってしまうのは不条理だ」という思いから生まれる気持ちであった。しかし、ベトナムを訪れ日本より経済的発展が遅くとも、笑顔で幸せそうに暮らす人々を見たとき、現地に行ってそこで人々の実際に暮しを見ない限り本当のその国の姿は見えてこないし、メディアなどを通して先入観のように植え付けられてしまった「途上国=かわいそう」という考えはぬぐえないのだと気づいた。
アフリカの中でも私はマラウイ共和国に関心がある。そこは世界最貧国の内の一つであるが、その一方でthe warm heart of Africaとの別名があるほど人々が親切で笑顔にあふれているという。今この国に行きたいと強く思う理由は決して「最貧国で衛生環境やインフラも整っていなくて可哀想だから」というものではなく、一人の人間としてその国の人々の暖かな人間性に触れてみたいと純粋に思ったからである。このように今までとは異なる視点から自分の関心のある地域、問題について目を向けられるようになったのも、ベトナムでの様々な経験があったからだといえる。
ベトナムから帰国し、一ヶ月以上がたった。今でもベトナムの土地の独特の空気感、におい、食べもの、そしてそこで出会った人々のことを写真や動画見て思い出し、戻りたいなと思う。これは、ベトナムの表層的な面だけでなく、現地の学生と二週間ずっと一緒に過ごせたことが大きな要因だと思う。もちろんうまくいかないこともあったが、それがあったからこそ単に観光旅行で行くのとは違う体験ができたのだと思う。
最後に、このような貴重な機会をくださった関さん、たくさん悩みながらもリーダーとして私たちを引っ張ってくれた、りのに心から感謝申し上げます。


1)世界ランキング国際格付けセンター(2015)人口10万人あたりの自殺者数(年齢調整値)ランキング<172カ国>  http://top10.sakura.ne.jp/WHO-GHE161.html

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