2016年10月26日水曜日

ベトナム VJYE 2016 報告書 (9) 木立卓(東京経済大学経済学部2年) 「かわる」

「かわる」

東京経済大学経済学部2年
木立 卓


蝉の鳴き声が消えかけ、夏が終わりを告げる頃、私達、関ゼミ生は青天の下に集まり、ベトナムへ旅立った。私にとって、今回の約二週間のベトナム研修は初の海外であった。この研修の中での私の感情の変化とともに、考えたことについて書いていく。
 「楽しみ」3割、「不安」7割で旅立ち、ベトナムの空港につきベトナムメンバーと会った時は、まだ先が見えず、「不安」10割になっていた。バスに乗りホテルへ向かった。道路は、テレビで見たのと同じく、バイクが魚群のように走っており、交通整備はあまりなく、クラクションは鳴りっぱなし。真夜中であるのに、『静寂』という言葉を知らないかの如く、夜は過ぎていった。
 次の日、コーヒーショップの中で日本、ベトナムメンバーが集まり自己紹介や、様々な会話が飛び交った。非常に楽しい時間であったと同時に、悩まされてもいた。それは、発音の違い。私自身の実力、勉強不足が露わになった。このことについては、最終日の前日には、慣れることができ、成長を実感することができた。数時間をこの場所で費やし、我々は、歩きで町を味わった。この時、私の中にあった「不安」は、「高揚感」、様々な事に対する「好奇心」で覆いつくされていた。良い感情である。この研修中で、三回大きく感情が変わったときの一つである。
 その中の二つは、三泊四日で行った村で起こった。この村は、ホーチミンとは空気や、雰囲気、建物や景色が非常に異なっていた。牛のフンの匂い、泥道。ホーチミンでは聞こえなかった虫の音。良い意味ではなく、マイナスの意味である。そんな中、二日目にサイクリングをした。道のない道、水たまりや石の上を走っていった。景色は綺麗だが、少しよそ見をすると転倒する。私は、このような道を走るとは予期しておらず、真っ白のスニーカーを履いていった。泥は、スニーカーの色を悪くしただけでなく、私達の心も徐々に負の方向へと蝕むのであった。不安や楽しみの感情は消え、「嫌悪」という新しい感情が生まれた。ただし、村での生活が少しずつ終わっていくのと同時に、この感情は消えていき、今となっては、非常に価値がある良い思い出となった。
 もう一つは、ベトナムメンバーの一人と夜に話した時だ。最初は、たわいのない、ふざけた会話から始まったが、話が進むにつれ、彼はある「悩み」を話し始めた。ベトナムメンバーは、どういう感情で話していたのかは分からない。しかし、それは、私の中の何かを大きく動かし、「哀しい」という新しい感情が生まれた。内容は、[他の国から大勢の人がベトナムに来る。他のアジアの人達や、ヨーロッパの人達。これは非常に良いことである。だが、ヨーロッパの人達は、背も高く顔もかっこいい。尚且つお金もたくさん持っている。彼らがベトナムに来て、大勢の女性を連れて行ってしまう。僕らはどうすれば良いのか]。この問いに、私はただ相槌を打つだけで答えることができなかった。何とも言えない「哀しい」気持ちになった。外国人が観光に来て、よく聞く問題は、[マナーが良くない、ゴミを堂々と路上に捨てていく、物を盗む]などがある。しかし、今まで、このことについて考えたことも、聞いたこともなかったと思う。これから、考えていかなければならなく、問いに対する答えを見つけなければいけない。
 村での私達の活動として、地面に穴を掘り、そこに柱を設置し、コンクリートで埋め、ゴミ箱をいくつも設置した。関ゼミの一つのテーマである、SDGsの為の活動だ。今までは講義を聞き、どうすればSDGsの17の目標を達成できるかを考え、話し合うだけであった。このように行動に移し貢献したのは、今回が初めてであった。初めて行動に移し分かったことは、極めて小さなプロジェクトにもかかわらず、非常に体力的に大変だということだ。しかし、このような小さな取り組みを止めることなく、今後のこのゼミが続けていけば、周囲も徐々に影響され、取り組みに参加する人々も増えてくるかもしれない。一人ではなく、二人、三人と、烏合の衆ではない軍団ができれば、より発展していく。このことが、もしかしたら私達のゼミの取り組める「持続可能な開発」のもう一つの目標かもしれない。
村を出て、ホーチミンへ戻ってからは、時が経つのが早かった。ホーセン大学に戻り、入院していたゼミメンバーの退院「記者会見」(記者役は我々とベトナムめんばー)。そして、一人一人のスピーチ。時間は、台風のように進路が決まっており、決して戻りもせず、過ぎていった。
 結果的に、プログラムは成功へと導かれ、空港での涙の別れとなった。この時の感情は「悲しい」であったとともに、「幸せ」でもあった。メンバー全員が、この時は同じ気持ちであったと思う。

 最後に、一つ。私は一人のベトナムメンバーに(いつも笑っている)と、笑顔で言われた。6月に関ゼミが開催したネパール支援家垣見一雅(OKバジ)氏の講演会で、垣見一雅氏は、⦅The surest way to be happy is to make others happy⦆とおっしゃっていた。この人を幸せにする方法の一つとして、自分自身が常に笑顔でいることだと、この研修中で理解することができた。

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